2017 Fiscal Year Research-status Report
非晶質ガウジ層の形成過程における断層潤滑のメカニズム解明
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16K05575
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
堤 昭人 京都大学, 理学研究科, 助教 (90324607)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三宅 亮 京都大学, 理学研究科, 准教授 (10324609)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 断層潤滑 / 水晶 / チャート / 高速摩擦 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究においては、地震時の断層強度弱化の過程に及ぼすガウジ層形成の影響を評価することを目的とした研究を行う。特に、チャートやノバキュライトなどの珪質断層における断層物質の非晶質化・水和化とその変形プロセスが高速すべり時の断層の強度弱化の過程に及ぼす効果の解明に研究の焦点を絞ることで、地震性高速すべりの性質を組み込んだ断層の力学モデル構築に貢献することを目指す。本年度は、大気中の湿度が断層摩擦特性に及ぼす影響を明らかにすることを目的として、人工水晶、チャート、花崗岩を用いた摩擦実験を湿度条件下(room humidity)と乾燥ガス(N2 or dry air)条件で行った。 本研究における摩擦実験では回転式摩擦試験機を使用し、外径 25 mm、内径 5 mm の円筒状に加工した試料を用いた。垂直応力 1.5 MPa、すべり速度 v = 0.005 mm/s-105 mm/s の条件で行った一定すべり速度実験において、以下の点が明らかになった。(1)室内湿度条件における実験では、すべり速度 v > 1 mm/s の条件において定常摩擦係数が速度とともに急激に減少することを特徴とする顕著な速度弱化が見られる。(2)試料室に乾燥ガスを導入した条件における実験においては、より低速の、 v > 0.1 mm/s で定常摩擦係数について顕著な速度弱化挙動が見られる。 (1)の結果は、これまでに報告されていた先行研究の結果と同様のものである。一方、(2)の結果は、ドライ条件においても、珪質物質の高速摩擦における強度弱化が起こることを示している。この結果は、珪質物質について知られている断層強度弱化のメカニズムが、断層物質の水和化に依らないものである可能性を示唆する。今後、断層表面への水分吸着の状態を評価することを目的とした実験を計画する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
珪質断層物質の高速摩擦特性における湿度の影響が明らかになりつつある。特に、珪質物質の定常摩擦について特徴的に現れる、比較的遅いすべり速度域での摩擦弱化の現象が、ドライ条件下でおこなった実験においても確認されたことは重要である。今年度はまた、昨年度準備した湿度発生装置を用いることで、回転式中-高速摩擦実験を相対湿度を制御した条件で行った。湿度発生装置から任意の露点に調湿された空気を導入することは可能となったが、調湿空気の流量不足により、断層部近傍を任意の湿度に制御した状態に到達することはできなかった。今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの2年間の研究で、ドライ条件での摩擦弱化のメカニズムを解明することが珪質断層の高速摩擦を理解する上で重要であることがわかった。今後は、ドライ条件下における摩擦弱化のメカニズムを明らかにすることで、珪質断層に特徴的にみられる高速弱化現象の素過程を解明する。そのために、ドライ条件を含む湿度制御条件での実験を行い、ナノスケールでの断層面の変形組織解析を行う。
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Causes of Carryover |
(理由)購入予定であった装置整備関連の物品の仕様・性能を検討し、納品価格を予定より低く抑えることができたため。 (使用計画)湿度制御システムの調整を目的とした用途に使用する。
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Research Products
(3 results)