2017 Fiscal Year Research-status Report
南西インド洋アトランティス・バンクにおける下部地殻岩の熱水変質作用
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16K05611
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
野坂 俊夫 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (80252948)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 海洋底 / 下部地殻 / 斑レイ岩 / 変質作用 / アトランティス・バンク |
Outline of Annual Research Achievements |
南西インド洋海嶺のアトランティス・バンクにおいてIODP 第360次航海で掘削されたHole U1473Aから採取された斑れい岩類について,昨年度に引き続き,岩石薄片の作成,光学顕微鏡による鉱物の同定と岩石組織の観察,および電子線マイクロアナライザーによる鉱物化学組成の分析と元素濃度マッピングを行った。これらに加えて新たに他機関の蛍光X線分光装置を用いた大型試料の元素濃度面分析と,レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析計と透過型電子顕微鏡を用いた層状珪酸塩鉱物の微量元素分析と結晶構造分析の一部を実施した。また,過去にアトランティス・バンクから採取され,現在は高知コア研究センターに保管してあるODP Hole 735Bのコア試料についても同様の分析を行った。 今年度実施した分析と観察により,昨年度の研究結果を再確認できただけでなく,新たに得られた成果として,角閃石や黒雲母の生成温度が角閃岩相の温度条件(700℃前後)で起こったこと,その変質作用が剪断帯や割れ目に沿って浸透した珪長質メルトと関連していること,さらに同様の変質作用が2か所の掘削孔で確認できたことが挙げられる。これらの成果は,超低速拡大海嶺周辺の海洋下部地殻における変質作用の時空分布を理解するうえで重要な知見となった。成果の一部は日本鉱物科学会で発表した。 また本研究の目的は,南西インド洋の斑れい岩を足がかりとして,海洋下部地殻の変質作用の全体像を理解することにある。そこで地域間の多様性と共通性を明らかにすることを目的として,アトランティス・バンクの斑れい岩の分析と並行して,他地域の海洋底斑れい岩や,陸上に露出した過去の海洋性リソスフェアであるオフィオライトの分析も行った。それらについて以前から継続して得られていたデータの取りまとめと解析を行い,成果の一部を国際学術誌上で公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は,これまでに海洋下部地殻においては産出がほとんど知られていなかった,変質作用起源の黒雲母を見出した。今年度は,その変質作用の温度条件,珪長質メルトとの関連,および三次元的広がりを明らかにすることができた。これらは海洋下部地殻の海嶺付近での大規模な化学的改変を示唆する重要な知見であり,海洋リソスフェアに関連する地質学と岩石学の発展に貢献することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,微量元素分析と結晶構造分析のデータを採取する。これまでに得られた鉱物共生,岩石組織,および主要元素組成に微量元素組成のデータを加えて,変質作用を引き起こした流体の化学組成を推定する。また黒雲母とその他の層状珪酸塩鉱物を化学組成と結晶構造の点から比較し,それぞれの生成条件を明らかにする。成果は学会と学術誌上で発表する。
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Causes of Carryover |
昨年度,顕微鏡システムの一部光学系を高性能の仕様に変更したことにより,予算超過を避けるための調整が必要になった。その影響で,今年度購入予定であった反射光学系の部品購入費をさらに次年度に繰り越す必要が生じた。また投稿論文の準備に遅れが生じたため,予定していた印刷費を次年度に回した。 繰越金は,研究遂行に必要な物品と論文印刷費として適正に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)