2016 Fiscal Year Research-status Report
巨大カルデラ噴火のマグマ溜まりにおける噴火準備過程の解明
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16K05616
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
東宮 昭彦 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 活断層・火山研究部門, 主任研究員 (30357553)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 洞爺カルデラ / 高シリカ流紋岩 / 斑晶 / 大規模火砕流堆積物 / 軽石 / 噴火 / マグマ混合 |
Outline of Annual Research Achievements |
洞爺カルデラ(北海道)で約11万年前に起きた破局的大規模噴火のメカニズム等を理解するため,この噴火の噴出物(火砕流堆積物中の軽石など)の岩石学的分析等を行っている.平成28年度は,室蘭工大およびオレゴン州立大学の共同研究者とともに,洞爺火砕流堆積物の地質学的調査と岩石試料の採取を行った.また,これら試料の化学分析を行い,京都フィッショントラックの共同研究者をも交えて,噴火に関与したマグマの特徴などを議論した. 洞爺火砕流をもたらしたマグマは,斑晶に乏しく(数%以下)シリカに富んだ(78重量%程度)高シリカ流紋岩で特徴付けられる.含まれる斑晶鉱物の化学組成や組織を調べると,主たるマグマである流紋岩マグマを起源とするtype-A,高温の玄武岩~安山岩マグマを起源とするtype-B,それらの中間的性質を持つtype-Cに大きく分けられる.このことは,噴火前に,流紋岩マグマと高温マグマなどが混合したことを意味し,この混合過程が噴火のトリガーと何らかの関連を持つと考えられる. 噴火をトリガーした可能性のある高温マグマ注入過程がいつ起きたかを調べるため,洞爺火砕流中のtype-B斜長石斑晶のMgO量のゾーニング(拡散)プロファイルを解析した.Costa et al. (2003) のモデルを適用して元素拡散時間を求めたところ,数百年~数千年が得られた.このことから,洞爺カルデラ直下への高温マグマの注入開始から洞爺カルデラ噴火に至るまでに,数百年~数千年かかったことが考えられた.この時間スケールは,低温で結晶量の多い(50%以上)マッシュ状マグマ溜まりに高温マグマが作用し,洞爺マグマのような高シリカ流紋岩質メルトを分離・集積するのに要した時間に対応する可能性がある. これらの結果については,国際学会や国際ワークショップでの招待講演,およびその他国内学会講演などにより発表を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画通りに,洞爺火砕流堆積物の現地地質調査や岩石試料採取,岩石学的分析が進んでいる.従来の知見の見直しを迫る新しい発見がすでにいくつも出ている.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,洞爺カルデラおよび関連噴出物の岩石学的分析を進めるとともに,高温高圧岩石融解実験にも本格的に取り掛かりたい.
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Causes of Carryover |
洞爺カルデラ噴出物の全岩化学組成について,分析企業に依頼分析(約9万円を想定)する予定でいたが,産総研において全岩化学組成分析体制が整ったため,所内で分析することにした. また,高圧ガス装置の圧力計安全弁の検査(費用約18万円)について,他予算で実施してもらえることになった. これらにより,平成28年度に残額が生じている.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は実験を本格的に開始するべく,実験関係の費用に予算が割かれる予定である. また,8月にアメリカでの国際学会に参加予定であり,航空運賃・宿泊費等が高い時期にあたるため,この参加費用も大きなウェイトを占める見込みである.
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Research Products
(6 results)