2018 Fiscal Year Research-status Report
巨大カルデラ噴火のマグマ溜まりにおける噴火準備過程の解明
Project/Area Number |
16K05616
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
東宮 昭彦 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 活断層・火山研究部門, 主任研究員 (30357553)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 洞爺カルデラ / 高シリカ流紋岩 / 斑晶 / 大規模火砕流堆積物 / 軽石 / 噴火 / マグマ混合 |
Outline of Annual Research Achievements |
洞爺カルデラ(北海道)で約11万年前に起きた破局的大規模噴火のメカニズム等を理解するため,この噴火および関連する噴出物(軽石や溶岩など)の岩石学的分析等を行っている.平成30年度は,岩石試料の化学分析とその検討,含まれる斑晶鉱物の化学組成や組織の分析等を引き続き進めた. 全岩化学組成分析等の結果,洞爺カルデラの活動が,後カルデラ火山である有珠火山や中島火山,さらには近隣の火山(喜茂別火山など) と関連していると考えられた.そのため,洞爺カルデラ噴出物の分析・解析に加え,関連する噴出物についての分析・解析も進めた.この解析を通じ,洞爺火砕流堆積物の存在が有珠火山の形成史(山体崩壊)にも影響を与えていることなどが見出された. また,斜長石や輝石などの斑晶鉱物の結晶成長履歴の読み取りによると,それら結晶成長の条件(マグマ組成や温度圧力等)は多段階に変化していた.結晶成長条件の変化は連続的ではなく不連続的である(ジャンプがある)ことから,次のいずれかの可能性が考えられる:(a) 何らかのイベント(高温マグマの注入など)がきっかけでエピソディックに条件が時間変化した; (b) 異なる条件をもつ複数のマグマ溜まりに存在していたマグマが噴火直前に段階的に混合した.両者を区別するべく,その条件変化の時間スケール等を推定するために,結晶の累帯構造のデータなどの取得を進めた. これらの結果については,国内外の学会で発表を行ったほか,成果の一部については論文発表を行った.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
全岩化学組成分析データや斑晶鉱物の化学組成分析・組織解析データの取得が進み,興味深い結果が得られている.既に得られた成果について論文等の公表が進んでいる.一方で,予定していた岩石融解実験が遅れている.これは,約1年掛かりで高性能な(既存装置より高圧条件が可能な)高温高圧実験装置の導入をしていたためである.このため,本研究の期間を1年間延長した.
|
Strategy for Future Research Activity |
2019年度はまとめの年であり,分析・実験のほか,成果のとりまとめ・発表・論文投稿に力を注ぐ計画である.
|
Causes of Carryover |
約1年掛かりで高性能な高温高圧実験装置を導入し,2019年春から稼働開始させた.本装置を用いた実験データを加えたいため,また本装置導入のために2018年度が極めて多忙となったため,研究期間の延長申請をさせていただいた.2019年度は,より充実したデータ取得と論文投稿を行う.
|