2017 Fiscal Year Research-status Report
キラルな分子の光電子角度分布における分子整列の影響の理論的解明
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16K05665
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
鈴木 喜一 北海道医療大学, 薬学部, 講師 (10415200)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 光電子円二色性 / 時間反転対称性 / キラリティ / False chirality / 反跳効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
光イオン化における光電子の角度分布について,左右の円偏光で差異があることが知られている。これは光電子円二色性と呼ばれ,電気双極子近似だけで説明できる。一般に,直線偏光または,円偏光による光イオン化では,光電子角度分布は二つのパラメータで記述できる。その一方が光電子円二色性の原因であり,分子がアキラルであるか,光が直線偏光であれば恒等的にゼロであると考えられている。現在,分子がアキラルであるというのは,その分子が回映対称性Snを持つということである。しかし,これまでの理論では,そのうち鏡映対称性S1,反転対称性S2しか考えられてこなかった。また,通常の円二色性と光電子円二色性の対称性における違いは考察されてこなかった。本年度は,すべての点群のすべての既約表現について,光電子円二色性の有無を調べた。 これまでにも光電子殻度分布おける分子の対称性の議論は多くの論文でなされてきた。ただし,そのほとんどが球面調和関数を,一般調和関数というものを利用している。一般調和関数は,既約表現ごとに定義されるので,計算に分子の対称性を反映させることができる。しかしながら,球面調和関数を一般調和関数で簡潔に表現する公式が,点群T,O,Iについて得られていない。そこで本研究では,有効演算子を導入して,一般調和関数を使うことなく,光電子角度分布の対称性を議論した。この方法により,光電子非対称性パラメータの対称性を,すべての点群のすべての既約表現について議論することが容易になった。その結果,光電子円二色性の有無に関して一般的な証明を得ることに成功した。また,吸収における円二色性の有効演算子が時間反転対称性について偶であるのに対して,光電子円二色性の有効演算子は偶奇が混じっていることを明かにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光電子角度分布の理論に関して,すべての回映対称性Snについて調べ上げるというのは,想定内であったが,時間反転対称性を議論できたのは想定以上であった。主な結果は,速報で発表済みである。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の理論研究は,ランダムに整列した分子についての光イオン化であった。今後は,整列した分子,空間中に固定された分子などを対象に,有効演算子法を適用する予定である。また,光電子角度分布以外の分子の性質に関しても,演算子法の可能性を探求する。
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Causes of Carryover |
バックアップ装置の導入を延期したため。 次年度は,バックアップ装置および文献資料の購入,学会発表を予定している。
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Research Products
(3 results)