2017 Fiscal Year Research-status Report
高効率な環状脱水素反応の開発を基盤とする発光性CNTセグメントのボトムアップ合成
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16K05679
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
伊東 俊司 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (10213042)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 環状ポリフェニレン化合物 / 湾曲ナノグラフェン / CNTセグメント / ボトムアップ合成 / 発光材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、縮環構造の形成に有利なベンゼン環配置を持った歪のない環状ポリフェニレン化合物を形成、温和な環状脱水素反応を鍵としてベルト状にπ共役系が広がったπ共役系化合物(CNTセグメント)の構築を目指して来た。また、モデルとする湾曲ナノグラフェン骨格の構築法を拡張することで、有限のベルト幅を持った湾曲カーボンナノリボン(CNR)類の構築、さらに、環状の堅固なπ共役系に期待される固体状態における発光機能の解明の課題を解決すべく研究を進めてきた。平成29年度は、(1)初年度の研究成果を基に、温和な環状脱水素反応の条件検討をさらに進めるとともに、(2)大きく湾曲した骨格形成が期待される奇数員環を骨格構造に取り込むモデル湾曲ナノグラフェンの分子設計と合成、(3)また、シクロパラフェニレン(CPP)の様にあらかじめ環状のリジッドな構造の構築を試みてきた。 その結果、良好な可溶化基となり得ることが明らかになったメシチル基を導入することで、これまで、困難であった温和な環状脱水素反応の条件検討をさらに進めることができた。また、奇数員環を骨格構造に取り込むモデル湾曲ナノグラフェンの分子設計としてナフタレン環を導入、分子内に7員環構造が導入された湾曲ナノグラフェンの生成が期待される結果を得た。さらに、環状の縮環構造の形成を目指したリジッドな環状構造をあらかじめ構築する試みとして、ハロゲン化合物の還元的カップリング反応による縮環系構築の可能性を明らかにすることができた。 さらに、これまで我々が進めてきた長鎖アルキル基の導入により可溶化したアームチェア型CNTの様式を持った歪のない環状ポリフェニレン化合物の構築と温和な環状脱水素反応による合成の検討結果と、CPPの一部をヘキサベンゾコロネン環で置き換えたフープ状の巨大な環状化合物の構築について、論文発表へ向けたさらなる検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、3年間を予定する本研究課題の2年目として、初年度に導入した立体的にかさ高い芳香環置換基であるメシチル基が良好な可溶化基となり得た結果をもとに、これまで、困難であったアームチェア型CNTの様式を持った環状ポリフェニレン化合物の温和な環状脱水素反応の条件検討をさらに進めることができた。その結果、これまで進めてきた長鎖アルキル置換基の導入により可溶化した環状ポリフェニレン化合物の環状脱水素反応の検討結果よりも、より明確なシグナルをマススペクトルにより観測することに成功した。現状では、完全なベルト状のCNTセグメントの構築を示す結果ではないものの明確なシグナルが得られたことは、今後のさらなる条件検討への道を開く成果と考えている。また、奇数員環を骨格構造に取り込むモデル湾曲ナノグラフェンの分子設計として、ナフタレン環を導入、分子内に7員環が導入された湾曲ナノグラフェンの生成が期待される結果が得られた。さらに、環状の縮環構造の形成を目指したリジッドな環状構造をあらかじめ構築する試みとしては、ハロゲン化物の還元的カップリング反応による縮環系構築の可能性を明らかにすることができた。これらの知見は、ベルト状にπ共役系が広がった完全な縮環構造の形成に有用な知見となり得るものと考えている。 さらに、これまで我々が進めてきた長鎖アルキル基の導入により可溶化したアームチェア型CNTの様式を持った環状ポリフェニレン化合物の構築と温和な環状脱水素反応による合成の検討結果、CPPの一部をヘキサベンゾコロネン環で置き換えたフープ状の巨大な環状化合物の構築について、論文発表へ向けた検討を進め発表のための基礎データの収集が終了した。 以上のことから、研究課題の2年度目として、最終年度へ向けて計画した研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、3年間を予定する本研究課題の最終年度として、これまでの2年間における成果、(1)立体的にかさ高い芳香環置換基であるメシチル基の導入による溶解性確保の検討結果、(2)2つのヘキサベンゾコロネン骨格をナフタレン構造で結合することで可能となった縮環反応時における立体的な制約の導入に関する検討結果、(3)奇数員環を導入することによる湾曲構造の初期段階での構築の検討結果、(4)リジッドな環状構造をあらかじめ構築するハロゲン化合物の還元的カップリング反応の検討結果を踏まえて、温和な環状脱水素反応を鍵としたベルト状にπ共役系が広がったπ共役系化合物(CNTセグメント)の構築を目指した探索をさらに進めていく。 特に、環状ポリフェニレン化合物の温和な環状脱水素反応の条件検討とともに、大きく湾曲した骨格形成が期待される奇数員環を骨格構造に取り込むモデル湾曲ナノグラフェンの設計と合成の検討を中心に検討を加え、ベルト状にπ共役系が広がったCNTセグメントの構築の可能性を追求していく。引き続き、巨大な環状のフェニレンアセチレン化合物、密にベンゼン環が集積した環状のポリフェニレン化合物、すでに構築に成功した完全な縮環構造よりなる湾曲ナノグラフェンなど、堅固なπ共役系化合物の詳細な発光機能を、固体状態における高発光性の観点から検討を行うことで、本研究課題の解決を進めていく。
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Causes of Carryover |
合成研究を主体とする本研究課題の推進においては、研究期間を通して消費される実験用器具類ならびに合成用試薬に関する物品は必要不可欠なものである。特に合成用試薬については、研究の進捗状況に合わせて効率よく準備していくことが必須である。平成29年度においては、実験用器具類ならびに合成用試薬等で経費を研究の進捗状況に合わせて効果的に執行していった結果、当初見積額から若干の予算を繰り越すことになった。平成30年度においては、3年間を予定する本研究課題の最終年度として、本研究課題の目的を期間内に完結できるよう実験用器具類ならびに合成用試薬等の経費として繰り越し経費と合わせて予算を効果的に執行していきたい。
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Research Products
(2 results)