2018 Fiscal Year Research-status Report
高効率な環状脱水素反応の開発を基盤とする発光性CNTセグメントのボトムアップ合成
Project/Area Number |
16K05679
|
Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
伊東 俊司 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (10213042)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 環状ポリフェニレン化合物 / 湾曲ナノグラフェン / CNTセグメント / ボトムアップ合成 / 発光材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、縮環構造の形成に有利なベンゼン環配置を持った歪のない環状ポリフェニレン化合物を形成、温和な環状脱水素反応を鍵としてベルト状にπ共役系が広がったπ共役系化合物(CNTセグメント)の構築を目指して来た。また、モデルとする湾曲ナノグラフェン骨格の構築法を拡張することで、有限のベルト幅を持った湾曲カーボンナノリボン(CNR)類の構築、さらに、環状の堅固なπ共役系に期待される固体状態における発光機能の解明の課題を解決すべく研究を進めてきた。 平成30年度は、立体的にかさ高い芳香環置換基であるメシチル基の導入による溶解性の確保の検討結果を基に、(1)奇数員環である7員環の導入による湾曲ナノグラフェン構造の構築と、(2)ハロゲン化合物の還元的カップリング反応によるリジッドな環状構造の構築に関する検討を進めることで、温和な環状脱水素反応を鍵としたベルト状にπ共役系が広がったπ共役系化合物(CNTセグメント)の構築法の探索を進めた。 さらに、巨大な環状のフェニレンアセチレン化合物、密にベンゼン環が集積した環状のポリフェニレン化合物、すでに構築に成功した湾曲ナノグラフェンなど、堅固なπ共役系化合物の発光機能を、固体状態における高発光性の観点から検討を進めてきた。さらに、これまで我々が進めてきたCPPの一部をヘキサベンゾコロネン環で置き換えたフープ状の巨大な環状化合物については、巨大な芳香環を系内に含むにもかかわらず、容易な芳香環の回転挙動が見られることを見出し、論文投稿に至った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30年度は、当初3年間を予定した本研究課題の3年目として、初年度に導入した立体的にかさ高い芳香環置換基であるメシチル基が良好な可溶化基となり得る知見を基に、奇数員環を骨格構造に取り込むモデル湾曲ナノグラフェンとして、ナフタレン環を導入、分子内に7員環が形成されることで大きく湾曲する湾曲ナノグラフェンの生成の検討を進めた。実際にナフタレン環を導入した一つのポリフェニレン化合物の合成を行い、温和な条件下における環状脱水素反応を検討したところ、完全な縮環反応の達成には至らなかったものの縮環反応の進行が認められた。さらに、環状の縮環構造の形成を目指し、リジッドな環状構造をあらかじめ構築する試みとして、ハロゲン元素が導入された環状のポリフェニレン化合物の合成を進めた。残念ながら、当初検討を行ったハロゲン原子の導入を検討した合成中間体においては期待した反応の進行は認められなかったことから、還元的カップリング反応によるリジッドな環状構造の構築には現在までのところ成功していない。しかしながら、これらの知見は有意なベルト幅を持った完全な縮環構造の形成に有用な知見となり得るものと考えている。 以上のように研究課題の3年度目として、計画した研究計画は、おおむね検討を終えたものと考えている。しかしながら、当初の補助事業期間(3年間)における研究から、多くの知見を得ることができたもののその多くが研究論文として投稿・発表までには至らなかった。得られた成果の社会への還元には、論文での発表まで完結する必要があり、論文投稿のための追加実験等の実施なども考慮して、1年間の補助事業期間の延長を行った。これまでに得られた成果の論文での発表が完了することで、本研究の目的がより精緻に達成されると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の補助事業期間(3年間)における研究から、多くの知見を得ることができたもののその多くが研究論文としての投稿・発表までには至らなかった。得られた成果の社会への還元には論文での発表まで完結する必要があり、論文投稿のための追加実験等の実施なども考慮して1年間の補助事業期間の延長を行った。これまでに得られた成果の論文での発表が完了することで、本研究の目的がより精緻に達成されると考えている。 平成31年度は、当初3年間を予定した本研究課題の延長年度として、これまでの3年間における未発表の成果、(1)長鎖アルキル基の導入により可溶化したアームチェア型CNTの結合様式を持った環状ポリフェニレン化合物の構築と温和な環状脱水素反応による合成の検討結果、(2)さらに、立体的にかさ高い芳香環置換基であるメシチル基の導入により溶解性を確保したナフタレン構造を結合した環状ポリフェニレン化合物の構築と温和な環状脱水素反応による合成の検討結果の主に2つの研究成果について、論文投稿のための追加実験等の実施も含めて、論文発表として社会への還元を進めていく。
|
Causes of Carryover |
合成研究を主体とする本研究課題の推進には、研究期間を通して消費される実験用器具類ならびに合成用試薬に関する物品は必要不可欠なものである。特に合成用試薬については、研究の進捗状況に合わせて効率よく準備していくことが必須である。平成30年度においては、実験用器具類ならびに合成用試薬等で経費を研究の進捗状況に合わせて効果的に執行していった結果、当初見積額から若干の予算を繰り越すことになった。平成31年度においては、研究期間の延長年度となることから、本研究課題の当初3年間の間の成果を踏まえて、論文投稿のための追加実験等の実施なども考慮して、本研究課題の成果の社会への還元を目指して繰り越し経費を効果的に執行していきたい。
|
Research Products
(2 results)