2016 Fiscal Year Research-status Report
高周期14族元素ポリラジカル種の合成、構造、および物性に関する研究
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16K05683
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
一戸 雅聡 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (90271858)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ケイ素ラジカル / オリゴラジカル / 常磁性化学種 / σ共役系 / オリゴシラン |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに申請者は嵩高いトリアルキルシリル基で立体的に保護した3配位シリルラジカル種を安定な化学種として合成、単離できることを見出している。これを基盤として、ベンゼンなどの炭素π電子系で複数の3配位シリルラジカルを連結したオリゴ(シリルラジカル)種の合成に拡張して、分子構造およびスピン状態の解析を行ってきた。また、ケイ素-ケイ素単結合におけるσ結合電子が非局在化(σ共役)することに着目し、ジシラン鎖で2つの3配位シリルラジカルを連結したテトラシラン-1,4-ジイル種の合成にも成功し、予備的な構造解析、スピン状態の解析を行ってきた。本研究課題の初年度(平成28年度)では、さらにケイ素鎖長を伸ばしたトリシラン、テトラシランで2つの3配位シリルラジカルを連結したペンタシラン-1,5-ジイル種、テトラシラン-1,6-ジイル種の合成を検討し、既に合成に成功しているテトラシラン-1,4-ジイル種を含めてスピン状態について解析した。 ペンタシラン-1,5-ジイル種、テトラシラン-1,6-ジイル種は、両端に嵩高いトリアルキルシリル基を導入した対応する1,5-ジブロモペンタシラン、1,6-ジブロモヘキサシランの還元的脱臭素化により合成した。トラシラン-1,4-ジイル種が室温でも十分に安定であることとは対照的に、ペンタシラン-1,5-ジイル種、テトラシラン-1,6-ジイル種は-30℃以下でも徐々に分解するほど不安定であった。 トラシラン-1,4-ジイル種、ペンタシラン-1,5-ジイル種、テトラシラン-1,6-ジイル種のEPRスペクトルの解析から、それらはいずれも基底一重項種であるが一重項―三重項のエネルギー差がそれぞれ約2.5 kJ/mol、約1.6 kJ/mol、約0.1 kJ/molであり、連結子のケイ素鎖長が伸びるとσ共役を介したスピン間相互作用が小さくなることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請段階における平成28年度の計画のうち、σ共役系オリゴシラン鎖を連結子とするビス(シリルラジカル)種としてトリシランおよびテトラシラン鎖を連結子とするペンタシラン-1,5-ジイル種、ヘキサシラン-1,6-ジイル種の発生に成功し、そのスピン状態の解析まで完了した。一方で、平成28年度が共同研究者である教授の定年退職直前であったことに伴い研究室の学生数が減ったため、ナフタレンやビフェニルなどの拡張炭素π電子系を連結子とするビス(シリルラジカル)およびそのゲルマニウム、スズ類縁体の合成には着手することが出来ず、やや遅れていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度から独立准教授として研究室を主宰していくことになったが、研究指導する学生数が2名(大学院生1名、学部4年生1名)で人的資源が少なくなった。そのため、申請当初の研究計画のうちσ共役を示すオリゴシラン鎖を連結子とするビス(シリルラジカル)種の合成を引き続き検討し、構造、スピン状態、および反応性に及ぼすオリゴシラン鎖長依存性の解明に集中して研究を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
平成28年度は、共同研究者である教授の定年退職直前であったことに伴い研究室の学生数が減ったため、ナフタレンやビフェニルなどの拡張炭素π電子系を連結子とするビス(シリルラジカル)のゲルマニウムおよびスズ類縁体の合成に着手することが出来なかった。そのため、それらの合成に用いる合成用試薬等の消耗品の購入が無く、当初計上していた予算より少なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
従来は、目的化合物の合成に必要な中間原料に市販品が存在する場合でも、教育的見地から市販品を購入せずに合成を行うこともあった。今後は、研究推進の効率化を最重要視し、高額な試薬であっても市販品が存在するものについては購入するなど適正な予算執行を行っていく。
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Research Products
(10 results)