2016 Fiscal Year Research-status Report
光学活性フルオロアルキル化合物の自在合成を指向した新規触媒反応の開拓
Project/Area Number |
16K05686
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
相川 光介 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (30401532)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 有機フッ素化学 / パラジウム触媒 / 環化付加反応 / 3成分連結反応 / 不斉合成 / キラル配位子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、高効率的合成法を駆使することによって、ファインケミカルズとして付加価値の高い多様な(光学活性)有機フッ素化合物を、簡単に、安価に、且つ安全に自在合成できる革新的合成プロセスを開発することを目的としている。 我々は以前、パラジウム触媒を用いた新規環化付加反応の反応機構解析に基づいて、末端アルキン、フルオロメチルピルベートおよび芳香族化合物を用いた新規な触媒的不斉3成分連結反応を開発し学術誌に報告している。本年度は、さらなる展開を目指し求核剤として種々のオレフィンを検討し、スチレン誘導体を用いる高ジアステレオおよびエナンチオ選択的な新規3成分連結反応を開発した。まずキラル配位子のスクリーニングを行ったところ、BINAP系配位子に関してホスフィン上をフェニルからp-トリルにするとエナンチオ選択性が最も高く、前回の結果とは全く異なり3、5-キシリル、さらに最も嵩高いDTBM基ではエナンチオ選択性がむしろ低下した。また求核剤にシス-ベータ-メチルスチレンを用いたところ、最も高いジアステレオおよびエナンチオ選択性で三連続不斉炭素を制御することに成功した。これらの3級アルコール誘導体は、非ステロイド系抗炎症薬の候補化合物として期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現代有機化学では、入手容易な原料有機分子から求める機能を有する分子を、簡単に、安価に且つ安全に合成できる工業化可能な実用的合成法の開発が必要とされている。このような学術的背景において、本研究では、工業化可能な新規触媒反応の開発とともに、この反応を用いて付加価値の高い多種多様な有機フッ素化合物を実用的に合成する手法を開発することを目的としている。 以上のような目的のもとで、本年度に見出したエナンチオ選択的な新規3成分連結反応は、無溶媒条件下、S/C=100の条件下でさえ良好に反応が進行し高いエナンチオ選択性で生成物として多様な有機フッ素化合物を与えることができる。この結果は、廃棄物を最小限に抑えたグリーンな不斉合成法として今後のさらなる展開が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、パラジウム触媒の触媒量の目標をS/C >1,000に設定し、不斉配位子、基質の詳細な検討は勿論のこと、溶媒や温度等の反応条件を徹底的に検討する予定である。さらに見出した最適条件下でスケールアップ(kg scale)を実現し、高効率的な不斉合成法を確立したいと考えている。 さらに今後は、創薬を指向した新反応開発について検討を重ねる予定である。見出した本三成分連結反応により、抗炎症薬の母骨格を一挙に触媒的不斉合成することが可能と考えている。
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