2017 Fiscal Year Research-status Report
光学活性フルオロアルキル化合物の自在合成を指向した新規触媒反応の開拓
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16K05686
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
相川 光介 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任准教授 (30401532)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 有機フッ素化学 / 環化付加反応 / 不斉合成 / アゼチン / ルイス酸触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、高効率的合成法を駆使することによって、ファインケミカルズとして付加価値の高い多様な(光学活性)有機フッ素化合物を、簡単に、安価に、且つ安全に自在合成できる革新的合成プロセスを開発することを目的としている。 アゼチンとはオキセテンのO原子が、N原子に置き換わった小員環化合物である。アゼチンは本来不安定な高ひずみな小員環化合物であるため、基質適応範囲は狭く、合成法は非常に限られていることがわかる。また、アゼチンの置換基による安定性の議論はほとんどされておらず、アゼチンの性質について未解明な点が多く、さらなる研究の余地があると考えられる。このような背景のもと、本年度の研究では、CF3基によって安定化されたアゼチンを[2+2]環化付加反応によって効率的に合成単離することを第一の目的とした。 実験の結果、保護基にカルボニル基を有するイミンを用いると、カルボニル基が反応に関与し様々な副生成物が得られた。従って、Nos基を有するイミンを合成しそれを用いることで、電子豊富なアルキンとの[2+2]環化付加反応による安定なアゼチンの合成を達成した。また、アゼチンの基質適用範囲の検討を行ったところ、アゼチンに様々な置換基を導入することにも成功した。さらに、アゼチンの熱的な安定性の評価を行い、置換基によるアゼチンの安定化効果を明らかにした。その結果、熱的安定性はアゼチン化合物の共役系の広がり及び置換基の電子効果に大きく依存し、オキセテンと同じ傾向を示すことに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、CF3基によって安定化されたアゼチンを[2+2]環化付加反応によって効率的に合成単離することを目的としている。 結果として今回、「アルキンとトリフルオロメチル基を有するイミンの[2+2]環化付加反応によるアゼチンの合成法の開発」に成功した。即ち、 生成するアゼチンをCF3基によるペルフルオロアルキル効果によって安定化し、通常困難である[2+2]環化付加反応によるアゼチンの合成ができることを証明した。さらに、「アゼチンの熱的安定性の評価」を行い、そのアゼチン熱的安定性に及ぼす置換基効果についてまで明らかとした。この結果は、アゼチンの実用的合成の開発のみならず不斉合成法へ展開可能であることを示している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでアゼチンの触媒的不斉合成を達成した報告例は全く存在しない。これは既に報告されているアゼチンの合成法が、アゼチジン自体からの誘導や分子内環化反応による方法であり、これらの手法では、アゼチンを不斉合成することは困難であったためである。 今回開発した[2+2]環化付加反応を用いる手法では、イミンを活性化することで、触媒的不斉合成を達成することができると考えられる。即ち、触媒としてキラルなブレンステッド酸やルイス酸を用いることで、さらなるアゼチンの収率の向上や、エナンチオ選択的な触媒的不斉合成の研究を行う予定である。
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