2016 Fiscal Year Research-status Report
二酸化炭素を炭素源として用いる電子移動型極性変換によるマンデル酸の環境調和型合成
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16K05763
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
仙北 久典 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (50241360)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 二酸化炭素の固定化 / マンデル酸誘導体 / 有機電解合成 / ベンザルジアセテート / 環境調和型合成 / フローマイクロリアクター / 極性変換 / 電子移動反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
塩化鉄存在下に無置換のベンズアルデヒドと無水酢酸との反応により、反応条件の最適化に用いる無置換のベンザルジアセテートを簡便且つ高収率で調製した。電解反応は、従来の知見をもとに白金陰極ならびにマグネシウム陽極を備えた一室型セルを用い、反応の制御が容易な定電流電解法で行った。種々のパラメーターのうち反応溶媒と支持電解質は、これまでの反応で有効であったDMFおよびBu4NBF4を使用した。反応温度を0 ℃、基質濃度を0.1 MとしてDMF中、二酸化炭素をバブリングしながら15 mA/cm2の電流密度で3 F/molの通電を行ったところ、期待したマンデル酸誘導体が37%の単離収率で生成していることが確認でき、原料のベンザルジアセテートが60%回収された。反応したベンザルジアセテートをもとにした収率は93%と高収率であった。電流密度を25 mA/cm2としたときに転化率は52%、収率が47%と上昇したため25 mA/cm2の電流密度が最適であると判断した。通電量を増加させるにつれ転化率と収率は向上し、10 F/molの通電量で転化率94%、単離収率85%でマンデル酸誘導体を得ることに成功した。以上のことから、反応溶媒DMF、支持電解質テトラフルオロホウ酸テトラブチルアンモニウム(Bu4NBF4)、反応温度0 ℃、電流密度25 mA/cm2を最適条件とし、通電量は基質に依存するものとして基質の適用範囲についていくつか検討を行った。パラ位にフッ素原子を有するベンザルジアセテートを基質として用いた場合でも同様の条件下6 F/molの通電量で相当するマンデル酸誘導体を72%の単離収率で得ることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、二酸化炭素の有効利用法開発の一環として、有機電解によって容易に達成可能な極性変換を利用することにより、ベンズアルデヒドから一段階で調製可能なベンザルジアセテートと二酸化炭素を出発物質としてマンデル酸誘導体を効率的に合成することを目的としている。 当該年度には、ベンズアルデヒドより容易に調製したベンザルジアセテートを白金陰極、マグネシウム陽極を備えた一室型電解セルを用いてDMF中、二酸化炭素存在下に電解還元することにより目的の二酸化炭素を炭素源としたマンデル酸誘導体を85%の単離収率で得ることに成功している。また、フッ素が置換したベンザルジアセテートを用いても同様の反応が進行することを既に確認済であり、次年度以降に計画している一般性や基質適応範囲の検討ならびにフローマイクロリアクターへの応用などの研究の基礎を築くこともできていることから、本研究はおおむね順調に進行していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、様々な官能基を有するベンザルジアセテートを調製し、反応の一般性と基質適応範囲について検討を行う。具体的には、芳香環上にアルコキシ基やエステル、ハロゲン、シアノ基などを有するベンズアルデヒドより相当するベンザルジアセテートを調製し、本反応の基質適応範囲について検討する。特に、シアノ基を有するマンデル酸誘導体は従来法では合成が困難であるためよりチャレンジングな基質として積極的に検討する。また、3,5-ジフルオロマンデル酸はγ-セクレターゼの阻害活性を示す化合物の部分構造を成しており、従来法では相当するベンズアルデヒドからシアノヒドリンを経由して合成されている。本法を用いることにより、より環境調和的かつ温和な条件下での高効率合成について検討を行う。 また、今年度購入したシリンジポンプと白金板を用いてフローマイクロリアクターを試作し、反応性電極としてマグネシウム陽極を使用しない連続的なマンデル酸合成のプロセスについて検討を行う。
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