2017 Fiscal Year Research-status Report
光を不斉源とするSCATおよび不斉増幅反応を利用したキラルらせんポリマーの合成
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16K05790
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
寺口 昌宏 新潟大学, 自然科学系, 助教 (30334650)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 俊樹 新潟大学, 自然科学系, 教授 (80212372)
金子 隆司 新潟大学, 自然科学系, 教授 (90272856)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 円偏光 / らせん巻方向選択的分解 / 速度論的光学分割 / 片巻きらせん高分子 / 環化芳香族化分解 / 絶対不斉合成 / キラル増幅 / キラル転写 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度(H28年度)に実施した<1>円偏光によるキラリティーの生成に加えて、<2>らせん選択重合ポリマー不斉触媒性の確立(キラル転写)、<3>らせん選択重合の非線形性の制御(キラル増幅)を行った。円偏光を不斉源としてラセミ高分子から光学活性な高分子を合成(キラリティーの生成)し、続いて生成した光学活性な高分子を不斉源としたらせん選択重合(HSSP)を行うことで、触媒的不斉増幅重合反応(キラルの転写・増幅)を検討した。 [1]自己不斉増幅重合、不斉転写増幅重合: らせん選択重合ポリマー不斉触媒性の確立(キラル転写)(<2>)で見出した自己不斉触媒性らせん選択重合(HSSP)および不斉転写触媒性HSSPと不斉増幅性HSSP(<3>)に適するHSSP活性モノマーよりHSSPにより得られた光学純度の低いらせん高分子をキラル共触媒(不斉源)として用い、自己不斉増幅HSSP(低い光学純度の高分子触媒を用いて触媒自身よりも高い光学純度の触媒と同じ高分子を得る)および不斉転写増幅HSSP(低い光学純度の高分子触媒を用いて触媒自身よりも高い光学純度の触媒とは異なる高分子を得る(キラル転写))条件の最適化を検討した。 [2]円偏光によるキラリティー生成とキラルの増幅と転写: [1]で用いていた低光学純度のらせん高分子をラセミ高分子への円偏光照射による合成する(円偏光によるキラリティーの生成)ことができた。また、光学純度の低い片巻き優先らせんポリマーを不斉源とした触媒的不斉増幅重合反応(キラルの転写・増幅)により、不斉触媒とは異なるキラル高分子の合成を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度はステップ3として、らせん選択重合の非線形性を明らかにし、また、制御について成果を得ることができた。生成ポリマーのらせん巻き方向について、①アキラル条件(キラリティー以外の条件:不斉源の重合開始剤に対するモル比、モノマーと触媒比など)および②キラル共触媒の光学純度、③条件①、②の組合せを種々変えた条件下でHSSPについて検討し、非線形性を明らかにし、また条件を制御することにより逆符号のコットン効果をもつ片巻きらせんポリマーを合成できることを明らかにし、機構についても考察した。他のいくつかのモノマーについて実験し、一般性について補足実験が必要であるが、予定していた一通りの実験について検討を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで得られた成果を下記のように組み合わせることで、円偏光を不斉源としてラセミ高分子から光学活性な高分子を合成(キラリティーの生成)し、続いて生成したキラリティーを不斉源とした触媒的不斉増幅重合反応(キラルの転写・増幅)により、不斉触媒とは異なるキラル高分子を合成する。この反応を連続的な反応として実現する。 <1>自己不斉増幅重合、不斉転写増幅重合: これまでに見出した自己不斉触媒性HSSPおよび不斉転写触媒性HSSPと不斉増幅性HSSPに適するHSSP活性モノマーよりHSSPにより得られた光学純度の低いらせん高分子をキラル共触媒(不斉源)として用い、自己不斉増幅*1HSSP(低い光学純度の高分子触媒を用いて触媒自身よりも高い光学純度の触媒と同じ高分子を得る)および不斉転写増幅*2HSSP(低い光学純度の高分子触媒を用いて触媒自身よりも高い光学純度の触媒とは異なる高分子を得る(キラル転写))を検討し、条件を最適化する。この段階では用いる低光学純度のらせん高分子共触媒は別途HSSPにより合成して用いる。 <2>円偏光によるキラリティー生成とキラルの増幅と転写: <1>で用いていた低光学純度のらせん高分子をラセミ高分子への円偏光照射による合成する(円偏光によるキラリティーの生成)、連続して、生成したキラリティーを不斉源とした触媒的不斉増幅重合反応(キラルの転写・増幅)により、不斉触媒とは異なるキラル高分子を合成する。また、円偏光SCATの機構および不斉増幅効率についても検討する。 <3>円偏光を利用した新たなキラリティの創製とHSSPによる不斉増幅重合: HSSPモノマーのアキラルな会合体およびアキラルなロジウム重合触媒への円偏光照射を行い、エナンチオマー比の崩壊によるキラリティの生成を検討するとともにHSSPによる不斉増幅重合による生成キラリティの検出について検討を行う。
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Causes of Carryover |
(理由)本年度はらせん選択重合の非線形性の制御、らせん選択重合ポリマーの不斉触媒性について検討を進めた。次年度は種々モノマーの構造を変えて、重合条件の最適化を行う。また、引き続き、円偏光照射波長、強度の検討は必要である。よって次年度に、合成、反応に掛かる消耗品費および波長カットフィルターなど光源関連の消耗品費を計上するこがより妥当と思われるため。 (使用計画) モノマーの合成用試薬および合成用ガラス器具類ならびに波長カットフィルター、円偏光用フィルターなどの消耗品費として用いる。また、一部を調査研究費へ充てる予定である。
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