2018 Fiscal Year Research-status Report
フェルスター型エネルギー移動を利用した新規高輝度赤色蛍光分析試薬の開発
Project/Area Number |
16K05805
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
川上 淳 弘前大学, 理工学研究科, 准教授 (60261426)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 蛍光分析試薬 / 赤色蛍光色素 / 高輝度 / フェルスター機構 / エネルギー移動 / FRET / トリプタンスリン / BODIPY |
Outline of Annual Research Achievements |
BODIPYとトリプタンスリンをポリエーテル鎖でつないだ以下の(1)と(2)の系を合成し,分子内のフルスタ―型エネルギー移動(FRET)と金属イオン認識能について検討した。(1)はBODIPYがFRETのエネルギードナー(D),トリプタンスリンがエネルギーアクセプター(A)であると想定した系,(2)は逆にトリプタンスリンがD,BODIPYがAであること想定した系である。(1)の系では,各種溶媒中で分子内のFRETが起ることが示唆された。しかし,Aの蛍光強度の著しい増大は観測されなかった。これは,励起波長がAの吸収極大波長に近いことが原因であり,Aの蛍光増大を起こさせるためには,Aの吸収を更に長波長側にする必要があったと考えられる。また,輝度は, 蛍光量子収率とモル吸光係数の積に比例するが,FRETの起こる系では,Dのモル吸光係数の値の大きさに関わらず,Aの輝度はAのモル吸光係数とAの蛍光量子収率の積に基づくことがわかった。 (2)の系では,極性の低い溶媒中では,基準物質との比較による蛍光スペクトルの変化からトリプタンリン(D)からBODIPY(A)への分子内FRETが確認された。一方,極性溶媒中では,分子内電荷移動(ICT)性の蛍光色素であるトリプタンスリンの吸収・蛍光が溶媒極性の増大に伴いレッドシフトすることで,BODIPYからトリプタンリンへの,即ちD, Aが入れ替わった逆のFRETも起こることを示唆する結果が得られた。更に,(2)の系については, 13種類の金属イオンに対する応答性についてアセトニトリル溶液中で調べた結果,Cu2+, Fe3+, Al3+に対して錯形成し,DからA及び,DとAが入れ替わったFRETのいずれもoffとなり,それに伴う蛍光スペクトルの変化により金属イオンの蛍光検出が可能であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
BODIPY誘導体とトリプタンスリン誘導体をスペーサーでつないだ幾つか系の合成に成功し,分子内のFRETと金属イオン対する蛍光応答性に関する知見を得た。また,種々のBODIPY誘導体とトリプタンスリン誘導体の金属イオンに対する蛍光応答性についての知見も得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で得られた成果を,2019年度中に論文にまとめて投稿をしたいと考えており,そのため再現性の確認などの幾つかの追加実験を行う。
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Causes of Carryover |
(理由)本研究で得られた成果を,2019年度中に論文にまとめて投稿をしたいと考えており,そのため再現性の確認などの幾つかの追加実験のための実験費と,論文の英文校閲費及び掲載料が必要となるため次年度使用額を残した。 (使用計画)再現性の確認などの幾つかの追加実験と,論文の英文校閲費及び掲載料として適切に使用する計画である。
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