2016 Fiscal Year Research-status Report
プロトン性イオン液体を用いたビーム源の開発:有機系SIMSの感度と面分解能の向上
Project/Area Number |
16K05832
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
藤原 幸雄 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 分析計測標準研究部門, 主任研究員 (60415742)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 表面分析 / 二次イオン質量分析 / SIMS / エレクトロスプレー / イオン液体 / イオンビーム / プロトン化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、プロトン性イオン液体を真空中でエレクトロスプレーする方式を用いた帯電液滴ビーム源を開発し、二次イオン質量分析(SIMS)への応用を目的とするものである。SIMSは、一次イオンビームを試料表面に照射することで生じた二次イオンを質量分析する手法である。分析対象が無機材料の場合には、酸素やセシウム等のイオンビームが用いられる。一方、有機系材料の場合には、イオンビーム照射に起因する有機分子の断片化(=フラグメンテーション)が避けられず、分子量の大きな二次イオンはほとんど検出できないという問題があった。しかし近年、クラスターイオンを一次イオンビームとして用いることで、比較的大きな有機分子も検出できるようになり、半導体産業のみならず、化学分野等においても、SIMSの応用範囲が広がっている。しかし、分子量の大きな分子を、高感度かつ高面分解能で分析することは未だ困難であり、大きな課題となっている。 そこで本研究では、イオン液体という液体を高真空中でエレクトロスプレーする方式の帯電液滴ビーム源を開発し、SIMSへの有用性を実証する。イオン液体は、蒸気圧がほとんど無いため真空中でも蒸発せずに液体として存在し、またそれ自体がイオン性の液体であるため、高真空中においてもエレクトロスプレーできることが大きな特徴である。イオン液体には、プロトン性のものと非プロトン性のものが存在するが、本研究ではプロトン性イオン液体を用いることが特徴である。プロトン性イオン液体を一次イオンビームとして用いることで、有機分子にプロトンが付加する反応が促進でき、プロトン付加した二次イオン量を増大できる。本年度は、硝酸プロピルアンモニウム(propylammonium nitrate)を用い、SIMS実験を行った。その結果、アミノ酸などのプロトン化分子が二次イオンとして検出でき、その有用性を実証できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プロトン性イオン液体の種類は多いが、その中から硝酸プロピルアンモニウム(propylammonium nitrate)が有望であることを実証できたことは大きな成果と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、帯電液滴ビーム源を集束型に改造してビーム特性を評価する。改造したビーム源をSIMS装置に設置し、SIMS分析における有用性を実証する。
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Causes of Carryover |
文献調査により、有望なプロトン性イオン液体の絞り込みに注力した。このため、実験による検証を効率化できた。さらに、既存装置を用いた実験が可能だったため、当初の想定よりも支出が少なくできた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、ビーム源の大幅な改造を予定している。また、SIMS実験装置の試料台等の改造も予定している。
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