2017 Fiscal Year Research-status Report
イオン液体が切り開くポルフィリン反応場のフロンティア
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16K05874
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
北岡 賢 近畿大学, 工学部, 講師 (50457602)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
信岡 かおる 大分大学, 理工学部, 准教授 (10398258)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | イオン液体 / ポルフィリン / NCP / 不斉誘導 / 金属錯体化 / ソルバトクロミズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ポルフィリン反応場としてのイオン液体の可能性を探求するものである。当該年度は、①イオン液体中でのNCPのソルバトクロミズムの調査と②マンデル酸型イオン液体中におけるNCPの不斉誘導に着手した。①イオン液体中におけるNCPのソルバトクロミズムの調査では、イオン液体構造がNCPの3H体、2H体を誘導する構造因子を明らかにした。元々、NCPは分子性溶媒中では、ジクロロメタン中では3H体を、DMF中では、2H体をとることが分かっている。イオン液体はNCPを溶解するため、イオン液体構造がNCPのソルバトクロミズムに与える影響を詳細に調査できる。様々なイオン液体中でNCPのソルバトクロミズムを調査した結果、アニオンに強い水素結合受容性がある場合、NCP外部窒素がNHとなる2H体を誘導し、アニオンに強い水素結合受容性が内場合は、カチオンの水素結合供与性が働き、3H体を誘導し易いことが明らかになった。②マンデル酸型イオン液体中におけるNCPの不斉誘導に着手し始めた。マンデル酸はキラルカルボン酸であり、不斉炭素に水酸基が直結していることから、不斉誘導に利用できる可能性がある。イオン液体化することで、媒体自身が不斉誘導場となると期待した。また、NCPは外周に一つ窒素が存在し、反転ピロールがポルフィリン平面より傾いているために、キラルな構造と言える。ただ、反転ピロールが室温下でフリップ・フロップ運動しているため、ラセミ化している状態である。当該年度は。マンデル酸型イオン液体の合成に成功した。また、そのCDスペクトルはマンデル酸の吸収領域にとどまらず、カチオンのイミダゾリウムの吸収領域においてもCD活性であり、カチオンにもキラリティーが転写されていることを確認している。今後は、NCPを溶解し、NCPの不斉誘導に着手する計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、①イオン液体中でのN-混乱ポルフィリン(NCP)のソルバトクロミズムの調査と②マンデル酸型イオン液体中におけるNCPの不斉誘導を目指した研究を展開した。①イオン液体中では、アニオンの水素結合受容性の高さの違いによりNCPのソルバトクロミズムが変化することが明らかとなった。これはNCPがイオン液体の水素結合受容性の指標となる可能性を示唆している。②マンデル酸型イオン液体を開発した。マンデル酸型イオン液体のCDスペクトルを見ると、イミダゾリウムの吸収領域でCD活性であり、カチオン-アニオン相互作用によりカチオン骨格にもキラリティーが転写されていることが明らかとなっており、概ね当初の計画通り研究は進行していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
29年度までに、イオン液体中でのポルフィリンの金属錯体化の手法を確立し、イオン液体種によりNCPのソルバトクロミズムを制御できることを明らかにしている。今後は、それら知見を活かし、NCPの金属錯体化をイオン液体種により制御する研究を展開していきたいと考えている。また、マンデル酸型イオン液体にNCPを溶解することで、プロキラルなNCPにキラリティーを導出できるか調査し、可能であれば、その状態で内部炭素にニトロ基などを導入することで、簡便なキラルポルフィリンの創生法に展開していく計画である。
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Causes of Carryover |
購入した分析天秤の価格と消耗品の価格が予想していたより安く購入出来たためである。これらの繰越金の使用計画としては、現在準備中の英語論文の投稿料として支出予定である。また、国内外の学会参加費、旅費として計画している。
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