2017 Fiscal Year Research-status Report
高活性・高耐久性を両立した燃料電池用カソード触媒の開発
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16K05883
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
矢野 啓 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (70402021)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 燃料電池 / 白金合金触媒 / 耐久性 |
Outline of Annual Research Achievements |
高活性・高耐久性を両立した燃料電池用触媒の開発にあたり、昨年度までに、ナノカプセル法により合成したPtCo合金ナノ粒子表面に均一にPtスキン層(PtxAL)を被覆したPtxAL-PtCo/Cを調製した。高いORR活性及び高耐久性を示すPtxAL-PtCo/C 触媒の構造最適化を目的とし、TEM-電子線回折にて結晶構造を中心に詳細を調べた。その過程において、活性および耐久性の両者とも結晶構造に大きく影響することが分かった。さらには、溶液中での活性評価の祭に行われる一般的な電位サイクル処理(安定化処理・清浄化処理)を施した活性評価直前のコアとなるPtCo/CおよびPtxAL-PtCo/C触媒の状態についても調べ、PtxAL-PtCo/C触媒が電気化学サイクル後に特有の構造を形成することが分かった。すなわちこの構造が高活性・高耐久性に強く関連していることが明らかになった。昨年度の結果も含め、上述の結果はH29年度の学会において公表した。また、本年度中に行われるシンポジウムでも既に発表が決まっている。さらに現在学術論文での公表の準備を行い、H30年度中には公開予定である。今後は溶液中での劣化試験中における構造変化の解析を推進するとともに、PtxAL-PtCo/Cの電位サイクル後の特殊構造を触媒調製時に再現し、量合成プロセスへと発展させる。また、当初の計画通り、Ptスキン層/3元合金触媒の開発に着手する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた部分電池法によってPtスキン層を形成させたPtCo合金触媒(PtxAL-PtCo)は、fct構造のPtCoコアと僅かなfcc構造を含むPtスキン層から構成されていることが分かった。また、酸性環境下で触媒として作動中のでは、PtCo合金コアの表面に強固なfcc構造のPtスキンが生成して内部を保護しているという構造に転換していることを初めて明らかにできた。そこで量合成および市販化を視野に考えると、予め触媒調製プロセスにおいて、この特殊構造を形成させるための反応条件等を検討することが必要になった。例えば、電位サイクルを、触媒の自然電位を雰囲気制御によって変化させて模擬したり、多量の触媒を電気化学処理できる電解槽の設計に取り組んでいる。調製後の触媒活性および耐久性評価を、燃料電池内を模擬した硫酸溶液中で行い、電気化学前処理無しに触媒能を評価することで目的の構造ができているかを判断する。当初はPtCo以外の合金系についても調べる予定であったが、本年度は、構造に関する新たな知見が得られたため、PtCo系のみにとどまった。触媒構造と活性および耐久性支配因子の関連性が明らかとなったことから、今後の研究が加速されることが期待される。当初の計画に対して、予想外の新しい知見が得られたことから、その詳細について調べる必要あった。しかしながら、最終的にはこれが目的の真意となりえることから、研究計画はおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
H29およびH30年度の研究で、高い酸素還元活性および高耐久性を両立した新規な合金触媒の調製することに成功し、さらに構造因子と活性・耐久性との関連性も明らかにできた。さらに、今後XAFS解析により構造を明確化し、予め触媒調製段階において、目的の構造を有する触媒の調製条件を検討する。さらに新たな合金種(2元系、3元系)にPtスキン層を形成させ、より高活性な触媒開発を目指す。
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