2016 Fiscal Year Research-status Report
構造制御した新規ポリチオフェン開発と高性能熱電変換デバイスへの応用
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16K05920
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
今榮 一郎 広島大学, 工学研究院, 准教授 (90293399)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 熱電変換 / ポリチオフェン / ヘキシル基 / エチレンジオキシ基 / 電気伝導度 / ゼーベック係数 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、有機熱電変換材料の開発研究分野において、これまで全く検討されてこなかった分子構造およびドープ率と熱電変換特性との相関を解明し、高効率駆動する熱電変換デバイスの材料開発に有益な分子設計指針を確立することを目的としている。 平成28年度はポリチオフェンの側鎖置換基の種類や導入率によって、ポリチオフェンの電子物性を制御することを目的として、3-位にヘキシル基を有するチオフェン (3HT) と3,4-位にエチレンジオキシ基を有するチオフェン (EDOT) を様々な比率で有する新規ポリチオフェンを設計、合成した。 得られた高分子は、3HT/EDOT比によって吸収波長領域や酸化還元電位が系統的に変化することを見出した。また、得られた高分子の電気化学的ドーピングを行い、ドープ状態における各高分子の熱電変換特性(電気伝導度およびゼーベック係数)を調査しようとしたところ、良好な自立膜を得ることができなかったため、正確な測定を行うことができなかった。そこで、各高分子に対応するモノマーの電解酸化重合によって電気化学的な手法で合成したところ、作用電極上に良質な高分子膜を得ることができるとともに、電極から剥離することで熱電変換特性の評価が可能な自立膜を得ることにも成功した。自立膜状態での各高分子の電気伝導度は高分子中の EDOT の割合が高くなるにつれて高くなることを見出した。一方、ゼーベック係数については EDOT の割合に関係なく、ほぼ一定であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画であった異なる置換基を異なる比率で含む新規ポリチオフェンの合成に成功するとともに、各高分子組成についても各種スペクトルより同定した。また、重縮合法で得た中性高分子を用いた場合には熱電変換特性を正確に行えるだけの自立膜を得ることができなかったが、電解酸化重合法を用いることで良質な自立膜を得ることができ、計画通り熱電変換特性と分子構造との相関を関連付けて解析することにも成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画どおり、平成29年度は合成した新規ポリチオフェンの熱電変換特性をドープ率を制御するなど詳細に調査する。また、本年度合成した高分子だけでなく、側鎖にアルコキシ基を有する可溶性ポリチオフェンの合成についても実施する。電気化学的ドーピングでは、低分子系のドーパントだけでなく、ポリシロキサンなど高分子系の電解質を用いて自立膜の膜質の更なる向上も目指す。
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