2017 Fiscal Year Research-status Report
リチウムイオン伝導体酸化物バルク結晶の育成とイオン伝導へのドメイン抑制効果
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16K05930
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
田中 功 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (40155114)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | リチウムイオン伝導体 / チタン酸ランタンリチウム / ニオブ酸ランタンリチウム / コバルト酸リチウム / TSFZ法 / バルク単結晶育成 / イオン伝導度 |
Outline of Annual Research Achievements |
高容量で安全性の高い全固体リチウムイオン二次電池の開発を目指して、分解溶融酸化物固溶体であるリチウムイオン伝導体酸化物のバルク結晶をTSFZ法により育成し異相のない最適な育成条件を明らかにするとともに、イオン伝導度の異方性やドメインの影響を調べることで、リチウムイオン伝導度劣化のメカニズムを明らかにすることを目的としている。 平成29年度は、チタン酸ランタンリチウムLa2/3-xLi3xTiO3 (LLTi)、ニオブ酸ランタンリチウムLa(1-x)/3LixNbO3 (LLNb)、コバルト酸リチウムLiCoO2のバルク結晶育成について育成条件の最適化を行った。 LLTiの単結晶育成では、成長方向[110]で結晶育成速度/原料供給速度比5.0/3.0において比較的に安定に直径5mm、長さ40mm程度の結晶を育成することができた。育成結晶のイオン伝導度は、室温においてσ[110]=1.64 mS/cm, σ[001]=0.526 mS/cmであり、異方性を観測した。 LLNbの単結晶育成では、TSFZ法によりLi濃度x=0.10において[001]方位の種結晶を用いて直径5mm,長さ40mm程度の結晶を比較的安定に育成できるようになった。育成結晶のイオン伝導度は、室温においてσ[100]=0.109 mS/cm, σ[001]=0.0741 mS/cmであり、異方性を観測した。 LiCoO2の単結晶育成では、酸化コバルトと液相に分解溶融することを明らかにした。そして、Li成分過剰の溶媒を用いてTSFZ法により単結晶育成を行ったところ、育成条件を最適化して傾斜ミラー型赤外線加熱炉を用いることで溶融帯を長時間安定に維持できるようになり、その結果、Co-O異相の析出を抑止して直径5mm、長さ40mm程度の黒色結晶を育成することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
TSFZ法によるLLTi、LLNb、LiCoO2の単結晶育成に関しては、研究目的を達成する目途が立っている。しかし、結晶中のLi濃度の制御に関して、特に、LLTiとLLNbでは、原料作製から結晶育成までのいずれの段階においてもLi成分が蒸発している可能性があることから、高いイオン伝導度のLi組成を決定するために、種々のLi濃度の原料を用いて結晶育成を行うことにした。また、ドメインの抑制法の検討については、種結晶の育成と結晶方位の決定に時間がかかっており、最適な育成方位を決定するまでに至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度に得られた結果を基にして、結晶育成に関してはLi濃度を変化させてリチウムイオン伝導体酸化物バルク結晶をTSFZ法により育成し、ドメイン制御に関しては結晶育成方位の影響を明らかにするとともに、強弾性構造相転移を利用して育成結晶への応力印加によるドメイン抑制の効果やイオン伝導度への影響を明らかにする。 結晶育成においては、種結晶を用いてTSFZ法により種々のLi濃度のLLTiとLLNbのバルク単結晶の育成を行い、均一組成の高品質バルク結晶を育成する。また、LiCoO2の結晶育成においては、ミラー傾斜効果を明らかにするとともに、種結晶を用いることでサブグレインのない高品質バルク単結晶を育成する。これらの育成実験と平行して育成結晶のイオン伝導度を測定して結晶育成条件にフィードバックする。 育成結晶中のドメイン抑制においては、高温からの冷却過程でも強弾性構造相転移によりドメインが形成されると考え、DTAによる相転移温度の測定や高温光学顕微鏡によるドメインの形成・消滅の観察を行うことで、ドメインの変化を明らかにする。
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Causes of Carryover |
【次年度使用額が生じた理由】 論文投稿の経費への支出を計画していたが、論文原稿の作成が年度末までに間にあわなかったため。 【使用計画】 次年度使用額を、当初予定していた論文投稿の経費に充てる。
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