2016 Fiscal Year Research-status Report
複合アニオン化合物のアニオン配列と物性制御に関する基礎研究
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16K05944
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| Research Institution | Mie University |
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Principal Investigator |
森 大輔 三重大学, 工学研究科, 准教授 (00432021)
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2016-04-01 – 2019-03-31
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| Keywords | 高圧合成 / 複合アニオン化合物 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
本研究では圧力をパラメーターとして複合アニオン化合物のアニオン配列と物性を制御するために、合成条件、組成、構造と物性との相関を明らかにし、固体化学的知見を得ることを目的とした。平成28年度は既知のA2MPO4F (A=Li, Na, M=遷移金属)化合物について、高圧合成の条件を検討し、相関係を調べた。
Na2CoPO4Fについて、これまでに3 GPa, 600℃で高圧相に転移することを明らかにしてきた。その際、さらに高い圧力で別の高圧相が存在する可能性が示唆されたため、より高い圧力下でNa2CoPO4Fの相関係について調べた。7.5 GPa, 600 ℃で高圧合成した試料では、3 GPaとは異なるXRDパターンが得られた。また、3 GPaのパターンと比べて反射がブロードになった。XRDパターンの特徴から当初はα-NaFePO4とNaFが生成したと考えられた。反射がブロードであることおよびα-NaFePO4とNaFの平均体積が3 GPaで得られるNa2CoPO4Fの高圧相より大きいことから、より高圧で安定相が存在し、減圧時に高圧安定相が不安定になることで相転移が進行したと考えられる。一方、7.5 GPa, 1000 ℃で合成を行ったところ、得られたXRDパターンは7.5 GPa, 600 ℃の試料のものと反射位置が一致し、反射はシャープになった。このことから得られた相は減圧に伴う高圧相の分解により生成した相ではなく、7.5 GPaでの安定相であることが明らかとなった。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では圧力をパラメーターとして複合アニオン化合物のアニオン配列と物性を制御することを目的に、圧力、温度、組成とA2MPO4F (A=Li, Na, M=遷移金属)化合物の相関係との相関について調べた。平成28年度は複数のA2MPO4F化合物について、温度、圧力など高圧合成の条件を検討し、新規相の探索および圧力下での相関係を調べた。
3-7.5 GPa, 600-1200 ℃の条件でA2MPO4F化合物の高温高圧処理を行った。得られた試料についてX線回折測定を行った結果、金属イオンの違いにより、相変化挙動が大きく異なることが明らかとなった。一部の化合物では常圧相やこれまで知られている高圧相とは異なる相が高圧下で存在することが示唆された。今後、X線回折測定およびエネルギー分散型Ｘ線分析装置を用いた組成分析により、相の同定を行う。また、高圧下でA2MPO4F化合物の分解により生成したリン酸塩についても、温度、圧力条件の変化により、これまでに報告されていない相が見られた。金属イオンの違いによる相変化挙動の違いについては今後検討する。また、異なる組成の化合物についても予備実験を進めている。以上のことから研究は概ね順調に進展していると考えられる。
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| Strategy for Future Research Activity |
今後は平成28年度に引き続き、キュービックマルチアンビル型高圧装置を用いた高圧合成により圧力、温度、組成とA2MPO4F (A=Li, Na, M=遷移金属)化合物の相関係との相関について調べる。28年度の研究により得られた高圧相について、X線回折測定および走査型電子顕微鏡およびエネルギー分散型Ｘ線分析装置(SEM-EDX)を用いた組成分析により、相の同定を行う。また、高圧下でのA2MPO4F化合物の分解により生成した相についても、同様に相の同定を行い、高圧下でのA2MPO4F化合物の相安定性について検討する。高圧合成は学習院大学の稲熊宜之教授に協力を依頼し、学習院大学にて行う予定である。三重大学においては、平成28年度に購入した小型反応容器を用い、100-200 ℃の条件で水熱合成を行い、新規A2MPO4F化合物の探索を行う。また、より高温、高圧条件での合成を行うために、テストチューブ型のオートクレーブを立ち上げる。テストチューブ型のオートクレーブの立ち上げやそれを用いた水熱合成については武田保雄三重大学名誉教授に協力を要請する。得られた試料についてはX線回折測定、SEM-EDX測定により相の同定を行い、イオン導電性、充放電特性などの電気化学特性の評価を行う。また、SQUID磁束計を用いて磁性測定を行い、物性評価を行う。磁性測定については学習院大学の稲熊宜之教授に協力を依頼する。
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| Causes of Carryover |
平成28年度の本研究においては、高圧合成用のアンビルの破損がなかったため、アンビルの購入を見送った。また、水熱合成用の小型反応容器については、テスト後にさらに購入する予定であったが、異動先でも数が確保されたために購入を見送った。
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| Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度ではテストチューブ型のオートクレーブを立ち上げる計画があるので、そのための必要な物品を購入する。また、異動に伴い、高圧合成のために学習院大学の装置を借用する必要ができたので、そのための旅費を増額する。電気化学特性の評価に向けて、現在所有している充放電装置のチャンネル増設を行う予定である。
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