2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K05982
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
才本 明秀 長崎大学, 工学研究科, 教授 (00253633)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 3次元き裂 / き裂伝ぱ / メッシュフリー解析 / 体積力法 / レーザ加工 / 加工シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、本研究課題を成功させるうえで最大のポイントとなる3次元き裂の伝ぱ拡大の計算機シミュレーションシステムを、要素分割を用いずに、メッシュフリーで計算を可能とする拡張を行った体積力法に基づいて解析するシステムを構築した。本解析システムでは、任意個数の平面3次元き裂が互いに合体したり、影響を及ばしながら伝ぱ拡大する様子を少ない入力データと計算時間とで極めて効率的にシミュレートすることができる。 解析手法のキーポイントは、き裂前縁を表す節点にはスプライン補間や、通常のアイソパラメトリック2次要素を適用して、必ず指定する節点を通過するような前縁形状を定義できるにもかかわらず、き裂面上で規定する体積力対の重み関数に関しては、MLS近似を持ちいることで注目する節点の近傍で、最小自乗的に節点における関数値をする連続関数が定義される。そのため、き裂面の要素分割を完全に無くした状態で、き裂先端の応力拡大係数を正確に解析することができるようになった。 開発したシステムを、購入したワークステーションを用いて典型的な問題を計算してみたところ、2き裂間の最小距離が直径と等しい等大2円板状き裂が遠方の一様応力負荷のもとで伝ぱ合体して1つの大きな円板状き裂となるまでの計算では、それぞれのき裂面上に200点ほどの節点をほぼ均等に分布するだけで約3分ほどで解析が終了することが分かった。これは3次元き裂伝ぱシミュレーションにおいてはチャンピオンデータに相当する計算速度であり、極めて効率的な解析システムが開発できたことを意味している。システムの開発が予定よりも早まったため、予定していた国際学会での発表を前倒しし、平成29年7月に破壊損傷に関する国際会議で公表することにしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ワークステーションの購入・搬入が予定よりもかなり遅くなってしまったが、平面き裂の伝ぱをシミュレートするメッシュフリー体積力法解析システムは、約10ヵ月ほどで開発でき、すでに試験運用の段階に入っている。平面き裂同士の合体については完全に問題なく利用可能であるところまで確認できた。き裂が合体する瞬間には、異なるき裂に含まれるき裂面上の節点が極めて接近することがあり、それが解析精度を低下させる場合があることが分かってきたので、合体の前後でそれまでのき裂面上の節点の座標を保持するのではなく、合体直前になると、合体後の形状をある程度予測して、均等な節点配置となるよう節点を再配置するアルゴリズムの開発に取り掛かっている。しかし、現状のシステムでもほぼ問題なく運用することができるため、平成29年度以降に予定しているレーザ加工実験における監察結果との擦り合わせや、平面的でないき裂問題への拡張も比較的スムーズに行えるものと期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度における主な研究課題は、レーザ加工時に発生する熱応力や、特にSD(スティルスダイシング)の際に材料内部に生成される加工層がワーク全体に及ぼす内力の分布や塑性ひずみ分布、あるいは残留応力の分布を評価するために汎用有限要素法システムを用いることである。ここではシリコンを主な対象材料とし、レーザ加工時に最大3000度近くまで局部的に温度上昇すると言われているシリコンの熱弾性学的挙動を、熱物性値が温度依存性を持つと仮定して評価する。 解析に必要となる温度依存する熱物性値の一部には文献値を用いることが可能であるが、レーザの吸収係数や反射率などは使用するレーザ波長にも依存するため実測が必要となる。そこで、本研究の構想段階から共同研究を行っている浜松ホトニクス株式会社に計測を依頼する予定である。また、現在のメッシュフリー体積力法解析システムは、平面き裂が平面内で伝ぱ拡大する問題にのみ利用できる。これは言い換えれば単独モードI問題のみに適用できることを意味しており、完全なる3次元解析システムとはなっていない。そこで混合モードの3次元き裂が、自由に伝ぱ拡大して曲面を形成するような問題に対しても本システムが適用可能となるように順次拡張を続けていく予定である。
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Causes of Carryover |
計画の段階で150万円で見積もっていた並列計算機システム一式が、新しいCPUの開発・販売に伴って単価が下がり、若干の値下がりが生じた。価格差は36,600円であり、この金額を28年度内に使用する事案が生じなかったので29年度に使わせていただくことにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成30年度に予定していた海外における研究成果の発表を29年度に早める計画をたてているため、使用可能であれば差額分は出張旅費への補充を考えている。
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