2016 Fiscal Year Research-status Report
新たなスラリー分布制御技術による高効率加工技術のメカニズム解明
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16K06030
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Research Institution | Akita National College of Technology |
Principal Investigator |
池田 洋 秋田工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (90573098)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 電界 / CMP / スラリー / 砥粒 / 研磨特性 / 研磨 / 炭化ケイ素 / サファイア |
Outline of Annual Research Achievements |
最近の世界規模での省エネルギー機運の高まりで,電力消費量の削減に大きく貢献するLED照明や,パワーデバイス半導体への置き換えが加速している.これらのデバイスに用いられるサファイアやSiCは化学的,機械的に安定な難加工性材料であることから基板の製造コスト上昇の一因となっている. この問題を解決するために,電界を援用した次世代高効率CMPを開発し,これらの基盤の研磨工程の工期短縮を目指している.具体的には,電界によって発生する吸引力をスラリーに作用させ,研磨領域からのスラリー飛散を抑制する.これによって工作物に作用させるスラリー量を増加させることが狙いである.したがって,電界を与えたときの研磨領域でのスラリー運動特性を把握しそのメカニズムを解明することが本研究の狙いの一つである.つまり,電界条件すなわち印加電圧,周波数によって,組込む電極の形状・サイズ・配置などを変化させた時の研磨領域におけるスラリー流れ,分布などの運動特性を解析しそのメカニズムを明らかにする. そのためには研磨領域におけるスラリー流れ,分布の状態を定量的に評価する手法を確立しておくことがメカニズム解明の大前提となる.本年度は,スラリー挙動観察,及び定量的把握に必要な物品を購入し,水ベーススラリー,及びオイルベーススラリー両タイプのスラリーを使用し,多角的に研磨領域のスラリー分布を定量的に評価した. その結果,電界条件によって変化するスラリー分布面積,そして研磨領域内における砥粒の濃度変化を定量的に把握する基礎的な評価方法の構築に成功した.来年度以降は,本評価手法のブラッシュアップを行うとともに,今後の様々な条件下でのスラリー分布を定量的に把握し,とくに電界環境下におけるスラリー運動のメカニズム解明を行っていく.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
スラリーの挙動を観察,記録するために簡易的な観察実験装置を製作した.本装置は研磨ヘッドとしてITO(透明電極付き)ガラスを使用し,今回は試料としてサファイア基板を貼り付けた.研磨ヘッドと定盤間に電界を与え,それらの隙間(研磨界面)に水ベーススラリーであるコロイダルシリカ系スラリーを滴下したときの分布状態を高速度カメラで撮影し記録した.このとき,最適な電極形状として基板とほぼ同サイズの電極が研磨界面でスラリーが最も拡大することを得た.得られたスラリー分布は画像処理ソフトによって2値化処理され,その画像から研磨ヘッド領域全体に対するスラリーの分布割合を算出することに成功した.そして,研磨ヘッド,及び定盤の回転速度を一定にして,周波数を変化させたときのスラリー分布について本評価手法を適用させ検証した.その結果,印加周波数が32Hzの時,最も研磨界面にてスラリーが拡大することを確認した. さらに,砥粒の濃度変化を定量的に把握するため,オイルベーススラリーを使用した時の砥粒分布状態を上記した観察装置及び高速度カメラを使用し,その研磨界面の様子を撮影し記録した.得られた画像から砥粒密度の変化をわずか7色の色相で表現し,それぞれの色相と砥粒密度の関係を観察実験を通して明らかにした.これらの結果より,研磨界面における砥粒数をの変化について定量的に評価することができ,研磨界面全体に存在する砥粒数の比較を可能とした.なお,ある条件下では印加周波数1Hzにて研磨界面の砥粒数が最大になることを得た. これら水ベーススラリーならびにオイルベーススラリー2種類のスラリーを用いた観察実験によって,研磨界面(研磨領域)におけるスラリー分布状態,及び砥粒密度(濃度)の変化を加味したスラリー分布状態の定量評価手法の基礎的な知見を得た.
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Strategy for Future Research Activity |
28年度に得られた研磨界面のスラリー分布評価手法を用いて,印加電圧,および印加周波数などの電界条件,さらに,定盤,および研磨ヘッドの回転速度などを変化させたときのスラリー分布を定量的に評価する.必要に応じて砥粒密度(濃度)分布状態を加味したスラリー分布評価を行う.また,研磨ヘッドの揺動機構を具備したスラリー観察実験装置を立ち上げ揺動条件がスラリー分布に及ぼす影響についても評価する. 一方,スラリー分布評価にて使用したスラリーを用いて,電界環境下における研磨実験を行う.このときの研磨実験条件は,可能な限り上記したスラリー分布評価と同じ設定とする.これらの結果より研磨特性とスラリー運動特性との相関性を評価する. さらに,電界条件,電極形状,そして被加工物の揺動条件をパラメータとしたときの研磨特性とスラリーの運動特性を比較検討し,電界環境下における迅速研磨メカニズムを解明する.
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Causes of Carryover |
28年度はスラリー分布面積の解析手法の確立を最優先し研究を進めた.そのため,研磨ヘッド揺動機構付スラリー観察実験装置の「揺動機構部分」の設計製作が本年中に間に合わなかった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
29年度に研究の進捗状況から揺動機構の必要性を見極めて,必要であれば同ユニットを設計し製作する.不要であれば,それに代わる新たな機構,あるいは材料の購入を行う.
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Research Products
(5 results)