2017 Fiscal Year Research-status Report

非接触ガスケットの開発：液体粘度の温度依存性を逆用した密封機構の検証と実験

Research Project

Project/Area Number	16K06037
Research Institution	Muroran Institute of Technology
Principal Investigator	風間俊治室蘭工業大学, 工学研究科, 教授 (20211154)
Project Period (FY)	2016-04-01 – 2019-03-31
Keywords	トライボロジー / ガスケット / 液体 / 粘度 / 密封
Outline of Annual Research Achievements	各種シールの中において、ガスケットは対向する静止壁面間の接触式密封装置／要素であり、様々な産業機械から日常的な生活用品に至る、極めて多岐に亘る分野や環境で利用されている。密封性を高めるためには、通常、締め付け力を高めることで隙間を減じ、微小な流路を断ち、流体の漏れを防ぐ。しかしながら、接触荷重の増加は、必然的に部材の変形や表面の損傷を伴う。また、密封を求められる部位の固体表面における粗さやうねりの存在ならびに締結材の緩みや装置の振動などは、部分的あるいは一時的なチャネルを形成させる要因となり、密封性が破られる。取り分け、厳しい条件や特殊な環境のもとでは、構成部品の組合せや分割を前提とする容器に対する流体の完全な封止は、著しく困難である。本研究は、密封部分の温度分布を能動的に与えて液体の粘度を制御することにより、従来、考えられていなかった方法により漏洩を阻止するガスケットを開発することを目的として開始した。主な特徴のひとつは、使用する液体は被密封液体そのものであり、特殊なシール液体を用いない点にあり、安全性、信頼性、環境性を担保している。平成２９年度は、平成２８年度に試作ならびに試験を行った結果に基づき、その改良版を製作し実験を行った。概要は、以下の点に纏められる。前年度に得られた知見を有効活用して、ペルティエ素子を搭載した供試ガスケットの試験機をあらためて試作した。この試験機では、内圧の掛かる場合の効果を検討するために、ポンプによる加圧式とし、ガスケットのシール面の冷却／加熱効果を高めるために、複数のペルティエ・モジュールを配置した。既存の計測器類を活用しつつ、隙間、温度、圧力をパラメータとして、主に計測した漏れ流量により密封性能を評価する実験を実施した。その結果、加圧条件下においても、ガスケットのシール部を冷却することで、隙間からの漏れを低減できる可能性を確認した。
Current Status of Research Progress	Current Status of Research Progress 2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned. Reason 平成２９年度においては、前年度の改良版となるガスケット試験機（第２号機）を考案、設計、製作して、予備実験を行った。試験機は、２枚の金属製の円板（直径：１５０　ｍｍ）と４台のペルチェモジュールから成る試験装置本体、ペルチェモジュールの駆動制御部、ガスケット中央部に設置した温度センサと圧力センサ、供試油を供給するタンクとポンプ、漏れを計測する流量計で構成された。上下部円板の間に、小さなシムリング（厚さ：０．０２～０．１５　ｍｍ）を挟み、ボルトで固定することで、一様なすきまのシール部を形成させた。下部円板には４本の脚を備え、本体をオイルコレクタに設置することで、漏れた液体を安全かつ効率的に回収した。実験は、下部円板に加工した、直径５０　ｍｍの中央部の窪みに、液送用のチュービングポンプを用いて強制給油（最高６０　ｋＰａ）した。なお、すきまからの漏れ流量は、管路途中に設置した羽根車式小形流量計により測定した。また、ガスケットの中央窪み部の温度および圧力を、それぞれ、白金測温抵抗体および歪みゲージ式圧力センサにより計測した。ペルチェモジュールで制御した温度に加えて、すきま、ポンプ圧力を代表パラメータとして、一定時間の流量を測定することで、現象の再現性や可逆性を確認し、シール特性を評価した。以上の状況から、「（２）おおむね順調に進展している。」と判断した。
Strategy for Future Research Activity	初年度の平成２８年度においては、円板形のガスケット試験機（第１号機）を設計、製作して、予備実験を行った。第２年度の平成２９年度においては、小型化などをはかりつつ、ガスケットのシール部を局所的に冷却／加熱することを可能とする装置に組み上げた。更に、ガスケット中央部の窪み部に加圧した供試液体を強制的に供給することで、温度や圧力の計測も取り込みつつ、密封性能を評価する実験を行い、２年度間の成果としては、概ね十分な進捗を得られたと考えられる。なお、本試験機の設計や製作ならびに実験や考察を進める中で、幾つかの課題や疑問が上がってきた。これらを踏まえて、改良および改善の検討を始めている。加えて、振動が加わる場合の密封性能について、試験機の改良により実験を進める予定であり、その一部については、既に着手している。
Causes of Carryover	予定した機器類の一部変更、他経費の一部利用等による。実験条件の追加等も含めて、引き続き研究を遂行するために、計測器類の整備や部品類の手配等を進める予定である。