2016 Fiscal Year Research-status Report
流体工学ワクチンによる強毒性インフルエンザパンデミック阻止に関する研究
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16K06079
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
山川 勝史 京都工芸繊維大学, 機械工学系, 准教授 (90346114)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | インフルエンザウイルス / 流体力学 / 数値流体力学 / ウイルス / 感染 |
Outline of Annual Research Achievements |
インフルエンザの空気感染ルートを明らかにし,強毒性ウイルスパンデミック時の被害を最小限に抑えることを最終目的として,数値流体力学を応用したウイルスの飛翔制御を行っている.ウイルス学に基づいたパラメータの導入により,その飛行経路の予測精度は著しく向上し,結果的に従来法による結果と全く異なった指針を示した.この計算手法を応用することでエンジニアリングによる立場から新たに流体工学ワクチンを提案し構築を目指している.ウイルスの感染は主に感染者から被感染者へと室内の気流を利用して伝わる経路と、一旦口鼻より流入したウイルスが気管や肺に着床する詳細な地点により決定される.特に着床位置はウイルスのタイプによりその感染力や毒性に大きな影響を与える.また室内における流れ解析と体内における流れ解析はそのスケールや性質が異なるが,本研究では連続的に行うことでより感染精度の向上を目指している.具体的には各計算結果をモジュール的に取り扱い,個々の環境下における最適なウイルス制御を算出するものである.しかしながら研究を進めるうちの新たな知見や発見により,計算精度そのもののさらなる向上も要求され,個々の計算手法のアップデートとモジュール化のための検討を平行して進める必要があるが,特にハードルが高い前者を優先的に行っている.パンデミックまであと数年と言われており,それまでに感染経路の確実な特定と回避のための制御方法を確立させたい.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の主な計画は総合計算技術の構築であり,そのためには室内流,体内流それぞれにおける計算技術の改良とウイルスの挙動計算に対する検討と深化である.まず室内流においてはこれまでの構造格子計算から非構造格子計算への移行を完了した.これにより人物周りの流れの計算精度を大幅に向上させることができた.これまで直方体と球で表現していた人物を完全な実形状での再現である.また同時に格子点数を半分以下に抑えることができ計算効率の向上にも繋がった.またウイルス挙動については新たに浮遊雲の影響を導入し,特に感染者付近に特徴が見られるウイルスの発散直後の挙動の違いを示すことができた.これらは,本年度においては最も大きな成果となっている.またMRSA院内感染の研究を進めておられる英国Warwick大学のYongmann博士とのヒアリングやディスカッションにより,ヒトの移動や病室内の扉の開閉による気流の影響についての重要性を認識した.
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Strategy for Future Research Activity |
来年度の計画では実用化に向けたケーススタディとデータベース化であるが,まずヒトの移動による気流への影響の調査をまず実施する予定である.動きについては代表的なものを数ケース計算し,この結果もデータベース化することで当初の計画を充実させることができると考える.一方,室内流計算を非構造化したことでコンピュータのメモリ容量は削減できたが、並列計算時においてはその計算効率の低下が懸念される.よって非構造格子に対する並列計算手法についても検討を開始し,総合的に研究の効率化に繋がるよう工夫することとする.こちらについては領域分割方法と要素配列の適正化,具体的には番号の近い要素同士を同一のコアにおいて計算させることでキャッシュミスを削減させる方法により,ある程度の目途を得ている.最後に室内ー体内計算の接続方法についても検討を開始する.
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Research Products
(5 results)