2016 Fiscal Year Research-status Report
スペクトル強度比を用いた3次元温度分布計測システムの開発
Project/Area Number |
16K06113
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
鳥山 孝司 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (50313789)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
一宮 浩一 山梨大学, その他部局等, 名誉教授 (30037923)
舩谷 俊平 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (50607588)
多田 茂 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工, 応用科学群, 教授 (70251650)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 温度計測 / 感温液晶 / 散乱光強度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で取り組んでいる感温液晶を用いた温度計測法では、450nm以下の短い狭域波長の散乱光スペクトル強度が、色彩の変わる温度範囲(呈色温度範囲)よりも広い温度幅で温度が高くなるとともに単調増加するという特徴を利用した新しい手法である。 散乱光スペクトル強度は照明の照射光強度にも影響を受けるため、温度分布計測を行うためには照射光強度の分布を予め検定しておく必要があった。この手法では、温度計測が容易ではない、液体内の温度分布計測への拡張ができない、などの課題があった。そこで初年度では、450nm以下の狭域波長の散乱光スペクトル強度の比をとることで照射光強度の分布を打ち消す手法を取り組んだ。また、コレステリック液晶とカイラルネマティック液晶とでどちらの感温液晶が本手法に対して適切であるかについても評価した。 同時刻での異なる狭域波長のスペクトル強度分布を得るため、計測対象物からの散乱光をハーフミラーで分け、2台の高速度カメラで撮影する計測装置を作成した。なお、それぞれのカメラの前には任意の狭域波長のスペクトルのみを通過させるため、バンドパスフィルターを取り付けた。 呈色温度範囲が10~20℃の感温液晶に対して5~60℃の温度範囲について5℃刻みで405,420,436,442nmのバンドパスフィルターの組み合わせでの狭域波長のスペクトル強度の比を比較した結果、420nm/405nmの比が最も計測可能温度範囲が広いということが分かった。なお、カイラルネマティック液晶は呈色温度範囲の上限よりも20℃高い40℃以上では、反射率が著しく低下するとともに散乱光特性が変わってしまい、計測可能温度範囲がコレステリック液晶と比べて狭いことも明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度では、同時刻における感温液晶からの狭域波長の散乱光スペクトル強度分布の比が得られる光学系装置の作成と最も良い狭域波長の組み合わせを明らかにし、また本手法に適した感温液晶の種類を決定することを予定していた。 実際にハーフミラーを介して2台の高速度カメラを用いた光学系装置を作成し、最も計測可能温度範囲の広い狭域波長の組み合わせ及び本手法に適した感温液晶の種類の決定も実施できた。 なお、5℃毎に測定して傾向を見つけ出した直後に高速度カメラが2台とも故障するというトラブルが発生し、詳細な結果(計測可能温度範囲の限界や温度分解能、不確かさなど)は得られていないが、現在は高速度カメラの修理も完了している。 装置や手法などについては完成しており、傾向なども得られているため、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは1℃刻みで計測を行い、より詳細な評価を行っていくことを予定している。その後、2年目の予定である液体内温度分布への拡張のため、1.焦点距離の影響、2.感温液晶微粒子を用いた温度計測を行う。 前者に関しては、カメラの位置を固定化し、計測対象物を動かすことで焦点距離を変えて実施する。後者については均一な温度分布を形成できる液体用の装置を作成して実施する。装置の完成は9月末を予定している。なお、感温液晶微粒子からの散乱光スペクトル強度を正確に画像から抜き出すアルゴリズムの構築が必要であり、それを作成してから評価する。このアルゴリズムの構築及びそこから得られる散乱光スペクトル強度比を用いた温度計測用プログラムの作成に要する期間として1ヵ月間を想定している。ここで作成するプログラムを用いて、今年度中は感温液晶微粒子を用いた計測における傾向や問題点を洗出しその対策の検討を完了することを予定している。
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Causes of Carryover |
実験装置の製作が想定よりも安く構築できたとともに、必要となる量の感温液晶の購入費用も少し抑えられたため、約25万円が1月の段階で未使用の状態であった。 1月に電源系トラブルで高速度カメラが2台とも故障してしまい、その修理は海外で行うため年度を超えてのことになることとともに修理の見積額がその未使用額と同程度の額であることが業者を通して確認できたため、全額を次年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上述のような形で次年度に使用できるお金を工面できたので、高速度カメラの修理に充てることができた。既に高速度カメラの修理は完了しており、その修理費用は237,600円であった。残金は電源系の修繕に充てて、故障の再発防止に努める予定である。
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