2016 Fiscal Year Research-status Report
マイクロ波急速加熱による薄膜シリコン結晶形成技術の開発
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16K06255
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
蓮見 真彦 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60261153)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | マイクロ波加熱 / シリコン / 活性化 / 結晶化 / 熱拡散ドーピング |
Outline of Annual Research Achievements |
マイクロ波加熱処理の高度化:マグネトロンから放射されたマイクロ波を効率的に反射する金属網ドーム構造を有する改良型のマイクロ波加熱装置を試作した。出力700 Wのマグネトロンを2基用いて、マイクロ波導波管を介して金属網ドーム内にマイクロ波を入射する。マイクロ波は金網ドームにより反射を繰り返し、石英容器内に置かれた試料に接するよう配置した発熱体の炭素粉末に効率よく吸収され、炭素粉末の発熱とともに試料は加熱される。装置に設置した放射温度計で測定した炭素粉末の温度は加熱開始から18秒で1600℃に達した。発熱温度に関する本研究の到達目標として設定した加熱開始から20秒で1400℃を上回る成果を達成した。高融点化合物半導体試料の不純物活性化実現のための要素技術として意義がある。 不純物の熱拡散ドーピング:n型シリコン基板上に真空蒸着法により形成したBOx膜およびp型シリコン基板上にスピンコート法により形成したPOx膜を不純物注入層として、出力1000W、29秒のマイクロ波加熱を用いて、不純物の熱拡散ドーピングを実施した。Bドープ試料のシート抵抗は1700Ω/sqから29Ω/sq、Pドープ試料のシート抵抗は460Ω/sqから16Ω/sqにそれぞれ減少し、B, P不純物の熱拡散および活性化を確認した。さらに、真空蒸着法によりAl電極を試料の表裏面に形成して電気特性を測定し、PN接合ダイオード特性およびAM1.5光照射下でのソーラーセル特性を確認した。低コストが強く要求されるソーラーセル製造プロセスにおいて不純物の熱拡散ドーピングは有用であり、熱効率に優れたマイクロ波加熱のソーラーセル製造プロセスへの導入は更なるコスト低減の可能性を示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画に沿っておおむね順調に進展している。マイクロ波加熱処理の高度化については加熱装置の改造によって、最高温度1600℃を超える本研究の研究目標を上回る成果を達成した。並行して実施した炭素粉末マイクロ波吸収体の抵抗率、粉末サイズ、密度、充填率と発熱温度との関係の調査も順調に進展し、平成29年度に実施を計画している炭素粉末発熱構造体および試料サセプタの試作に取り掛かったところである。 マイクロ波加熱技術の半導体デバイス作製への応用に関しては、シリコン基板の不純物活性化について、BおよびPの熱拡散ドーピングを試み新たな知見を取得した。一方、シリコン薄膜の結晶化については検討時間が不足したこともあって、平成28年度中に新規の成果を取得するには至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
炭素粉末マイクロ波吸収体に関する平成28年度の調査結果をもとに、炭素粉末発熱構造体および試料サセプタを試作し、短時間・高温加熱に適したマイクロ波加熱装置の構造を検討する。 試作装置を用いて、シリコン基板のイオン注入不純物の活性化・再結晶化、不純物の熱拡散ドーピング、シリコン薄膜の結晶化について検討し、マイクロ波加熱を用いた半導体デバイス作製技術の確立を図る。さらに、高融点化合物半導体材料の不純物活性化について検討する。
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Causes of Carryover |
マイクロ波加熱装置の高度化を図る過程において、当初スケジュールより前倒しして最高加熱温度の目標を達成したことを受けて、平成29年度に実施を計画していた炭素粉末発熱構造体および試料サセプタの試作前倒しについて検討した。そのため、平成28年度後半、一時的に物品費の使用を控えたことに因り、次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初計画通り、炭素粉末発熱構造体および試料サセプタの試作を実施する。さらに、シリコン基板、薬品の購入等に物品費を充てる。
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