2017 Fiscal Year Research-status Report
情報ハイディング技術に基づいたメディア情報処理技術の高付加価値化に関する研究
Project/Area Number |
16K06331
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
青木 直史 北海道大学, 情報科学研究科, 助教 (80322832)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 情報ハイディング技術 / ステガノグラフィ / 高付加価値通信 / 音声通信 / 信号処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、(1) 情報ハイディング技術による音声通信の高機能化、(2) ロスレス方式およびリバーシブル方式の情報ハイディング技術の開発、(3) 情報ミスリーディング技術によるメディアの高付加価値化を研究の3つの柱としている。 (1)は、音楽制作に利用されているサウンドエフェクトのノウハウを積極的に応用し、音楽制作では一般的なステレオによる音像定位技術を電話音声に対して適用することで、高齢者にとっても聞き取りやすいユニバーサルクオリティの電話品質を目指すことを具体的な目標としている。平成29年度は、情報ハイディング技術を利用してモノラルの電話音声をステレオに拡張する信号処理手法について検討した。 (2)は、情報を埋め込んでもメディアにはまったく傷がつかないロスレス方式の情報ハイディング技術の高度化について検討することを具体的な目標としている。平成29年度は、ロスレス方式よりもさらに多くの情報を埋め込むことができるセミロスレス方式の情報ハイディング技術をベースにして、ポストプロセスにより完全に元通りの情報を復元できるリバーシブル方式の情報ハイディング技術について検討した。 (3)は、ひとつのデータに複数のデータを埋め込む情報ハイディング技術について検討することを具体的な目標としている。平成29年度は、音楽データを具体的なターゲットとして、ひとつのデータに複数のデータを埋め込む信号処理手法を検討し、見かけはひとつのデータから複数のデータを読み出す情報ミスリーディング技術について検討した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
情報通信の付加価値を高めるには、一見すると無駄なものとして切り捨てられてしまいがちな情報の冗長性を巧みに利用することがひとつのアプローチになる。本研究は、付加情報をやり取りするためのチャンネルとして情報の冗長性を利用する「情報ハイディング技術」を応用することで、標準フォーマットとの互換性を維持しながらも新たな機能を実現する高付加価値通信のコンセプトを打ち出し、情報通信のさらなる高機能化の可能性について追究することを目的としている。また、情報を読み出すルールを変更することで、見かけはひとつのデータから複数のデータを読み出す「情報ミスリーディング技術」を提案し、情報ハイディング技術の新たな研究分野を創出することを目指している。平成29年度は、こうした研究の目的を達成するための検討を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の成果をベースにして、引き続き情報ハイディング技術の高度化について研究を進めていくことを予定しているが、さらに効果的に研究を推進していくうえで、研究代表者がこれまでに手がけてきたメディアの改ざん検出技術の研究も取り込みながら、広い視野で研究を推進していきたいと考えている。 研究代表者は、これまでに「数論変換」と呼ばれる直交変換を利用した情報ハイディング技術を開発し、メディアの改ざん検出技術の研究を行ってきた。ディジタルコンテンツ、たとえば、デジカメの写真は画像処理ツールによって容易に改ざんすることが可能であり、現時点では裁判などの証拠物件として認められていない。しかし、社会の急速な情報化に伴いディジタルコンテンツが急増している現在、ディジタルコンテンツの原本性保証に関する研究は国内外を問わず重要な課題となっており、「フォレンジクス」と呼ばれる研究分野として注目を集めている。 社会の急速な情報化に伴い、フォレンジクスのニーズは今後ますます高まっていくことが予想される。本研究は、情報ハイディング技術の高度化を目標としてさまざまな課題に取り組むことを計画しているが、その成果はひいてはフォレンジクスの高度化にも貢献する可能性がある。こうした可能性を考慮に入れ、情報セキュリティ技術の動向をにらみながら、研究の方向を適切に修正しつつ研究を推進していきたいと考えている。
|
Causes of Carryover |
研究代表者は、これまでに企業との産学共同研究を通して研究に必要なツールの蓄積を行ってきた。本研究では、こうした過去の資産を活用することで、これまでのところおおむね順調に展開することができており、これが当初の予定よりも経費を節減できている理由となっている。平成29年度に経費の節減によって生じた未使用額は、平成30年度請求額と合わせて、国内成果発表(50千円×3回程度)、国外成果発表(150千円×1回程度)に使用する。
|
Research Products
(5 results)