2018 Fiscal Year Research-status Report
マルテンサイト相の増えない環境でも使えるステンレス鋼の疲労劣化診断システムの開発
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16K06386
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木下 勝之 京都大学, エネルギー科学研究科, 准教授 (80325240)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 非破壊評価 / 疲労 / ステンレス鋼 / 磁性 / 表面改質層 |
Outline of Annual Research Achievements |
①表面改質層センサの力学特性の支配要因の調査 表面改質層センサの能力のひとつである疲労抑制機能を支配する要因を調査するため,実験と有限要素法を用いて,硬化量と内部応力がSUS304鋼の曲げ特性に与える影響を調査した.具体的には,応力除去焼鈍しによって内部応力を変化させた試験片を作製し,内部応力が曲げ特性に与える影響を評価した.さらに,有限要素法を用いて,内部応力,硬化量,内部応力と硬化量をそれぞれ変化させて,それらが曲げ特性に与える影響を調査した,その結果,応力除去焼鈍しを行った試験片の曲げ特性を再現可能な条件が明らかになり,表面改質層センサの力学面からの設計条件を定めることが可能になった. ②ショットピーニングによる表面改質層センサの創製 前年度までに明らかになったマルテンサイト相分率を制御可能なショット条件因子を変えて試験片を作成し,試験片のマルテンサイト相分率を評価した.その結果,噴射圧力,粒径と噴射時間以外に,マルテンサイト相の発生に影響する因子があることが判明し,その因子も明らかにすることができた. ③マルテンサイト相の磁気的可視化手法の開発 これまで観察してきた針状マルテンサイト相ではなく板状マルテンサイト相を可視化するための最適な磁化方法について検討した.その結果,EBSD法による可視化結果とほぼ同程度の分解能でマルテンサイト相を可視化可能であることが確認できた. ④単一マルテンサイト相の磁気特性の評価 表面改質層センサの磁気モデル作成に必要な,マルテンサイト相粒子の磁気特性を調査するために,マイクロサイズの板厚や直径を持つ板材と線材を用いて,引張試験によりマルテンサイト相を生成しSQUID磁束計により磁場-磁化曲線を計測した.その結果,マルテンサイト相の生成やその磁気特性にに試験片サイズが重要な役割を持つことがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
表面改質層センサの疲労抑制機能を制御するためのセンサの設計手法の開発は順調に進んでいる.しかし,センサを製作するショットピーニング処理において,これまで注目していなかったパラメータがセンサ特性のばらつきに影響を及ぼすことが判明したため,試験片の製作が遅れている.ただし,原因については解明ができたので,早急に新しい試験片を製作する予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
1. 表面改質層センサの設計手法の開発として,疲労抑制機能については前年度までの研究によって,疲労抑制機能を制御できると考えられる条件が明らかになったので,その条件を元にショットピーニング処理した試験片について,疲労試験を行い疲労寿命への影響を評価する. 疲労度評価機能については,昨年度に引き続き,表面改質層センサの磁気モデル作成に必要な,単一マルテンサイト相粒子の磁気特性を調査する. 2. 内部応力―磁気特性関係の解明として,ショットピーニングにより生成された表面改質層センサの内部応力,転位密度と磁気特性の関係を調査する. 3. 表面改質層センサの中温下での疲労特性の評価として,疲労抑制機能の評価を行う試験片と同じショットピーニング条件で製作された試験片を用いて,マルテンサイト相が発生しないと考えられている温度で疲労試験を行い,表面改質層センサの疲労特性と磁気特性の関係について調査する.
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Causes of Carryover |
ショットピーニング条件を見直す必要が生じたため,本来作成予定の試験片の作成を取りやめたために次年度に使用額が生じた.
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