2017 Fiscal Year Research-status Report
災害,機器故障にレジリエントな電気鉄道システム構築に向けた方法論
Project/Area Number |
16K06428
|
Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
宮武 昌史 上智大学, 理工学部, 教授 (30318216)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
富井 規雄 千葉工業大学, 情報科学部, 教授 (50426029)
近藤 圭一郎 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (10425895)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 電気鉄道 / レジリエンス / 電力 / 運輸 / 車両 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は「電力供給制限エリア」に焦点を当て,連携研究者のレビューを仰ぎつつ,3研究者のそれぞれの分野(電力・運輸・車両) で検討を行った。具体的には,回生ブレーキの特性も考慮し,電力量の削減だけではなく,ピーク電力の削減をも考慮することで列車を間引く必要性の低い運転方法や列車運行ダイヤ作成方法について議論した。列車単体のピーク電力を抑制するモードを車両に追加することを提案し,複数駅からなる都市鉄道路線モデルにおいて回路計算部を実装した鉄道運行シミュレータにより電力と電力量を評価した結果,変電所全体でのピーク電力を効果的に削減できることに加え,路線条件によっては回生電力の融通が図られて電力量の削減も達成される可能性があることを明らかにした。このような結論は,非線形な特性を含む回路を正確に計算する機能を有するシミュレータでなくては出て来ないものであり,本研究グループの持つ知見を利用することでそれが明らかにできたことは大きな成果と考える。 また,H28年度に得られた研究実績のさらなるブラッシュアップとも位置付けられる内容として,運休路線の途中折り返しや迂回路線の増発を行うレジリエントな運転整理法の検討や,損傷を受けやすい架線をなくした架線レス蓄電池電車用非接触給電装置の特性改善の検討も行った。前者では大規模な運行乱れが発生した場合の対処方法がより網羅的に検討され,後者ではコイルの位置ずれに対する伝送電力の安定化のための制御やコイル設計について一定の改善がなされた。これらにより,運転整理の高機能化による大規模な運行乱れや,地上設備簡素化による自然災害へのレジリエンス向上に寄与できる。 これらの成果は,雑誌論文や国際学会等により積極的に対外発表を行い,研究成果を広く国内外に発信し,今後も発信を続ける予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度から本年度の2年間で,「停電エリア」「電力制限エリア」を対象とした検討を一通り行うという当初計画であった。これに対し,「停電エリア」に関しては蓄電装置により列車を安全な場所まで移動させる合理的な救済運転法,停電区間をも走れる車上蓄電装置の合理的設計制御法,運休区間の迂回路線で増発を行う運転整理法,といった成果が既に得られている。また,「電力制限エリア」に関してはピーク電力を抑制して列車を間引く必要性の低いダイヤ作成や運転法,架線の損壊の心配のない鉄道用非接触給電装置の高機能化,といった成果が既に得られている。それらの成果は電力,車両,運輸という異なる専門の研究者が協同でプロジェクトを遂行することで実現されている。これらから,当初計画で求められていた成果を概ね得られているものと考える。 それらの成果は既に複数の雑誌論文や国際学会等により発信し,多くの人が成果にアクセスすることができるようにした。推進体制も,類似の科研費の課題に関わる研究者も交えて様々な知見を相互に吸収できる体制で進めてきた。これらにより,様々な批判に耐える成果が生み出せたものと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度となるH30年度は,H28~29年度の検討を踏まえ,分野横断的な総合検討を行う予定である。その中では,様々な観点からレジリエンスを総合的に評価するための項目の検討が重要となり,これまでの検討結果も踏まえ,改めて評価項目の洗い出しを行う。例えばエリア全体での電力量,ピーク電力,滞留人数,旅行時間などの定義や計算法について議論し,その方法論を示すことを検討する。さらに,東日本大震災における帰宅難民や節電ダイヤを一つの例に取り,改善策を提示するなど,目に見える形で分かりやすいアウトプットを出すことを目指す。また,H28~29年度で行ってきた「停電エリア」「電力制限エリア」に関する検討のブラッシュアップも合わせて行っていく。 得られた成果については,論文や学会発表を積極的に行うことはももちろん,シンポジウムや各大学のオープンキャンパス等の機会に積極的に公開し,国土強靭化による安全・安心な社会に寄与する成果をいっそう広く国民に周知したいと考える。また,本成果は地震国や電力供給の不安定な国へのインフラ輸出に繋げられるとも考えられるので,その可能性について示し,我が国の産業界への貢献も目指したい。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた具体的な理由は,前年度の未使用額が多くあったことに加え,交付申請の段階で立案したH29年度の予算計画に対し,実際の物品購入時に値引き等で当初予算よりも支出額を削減できたことが挙げられる。当該年度の単年度で言えば,当初予算よりも少し多く使用しており,前年度の未使用額を有効利用しつつも,無駄な使用をしないよう抑制した結果と言える。よって,全体的な研究計画が当初の予定通り進んでいないことが次年度使用額が生じた原因ではない。
次年度は最終年度であり,研究も特段の遅れはないため,今回の次年度使用額は成果発表等に有効に利用したいと考える。
|