2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K06429
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
高橋 将徳 東海大学, 基盤工学部, 教授 (20300650)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 制御工学 / 自己修復 / 故障検知 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、センサ・アクチュエータの故障によるフィードバックループの切断や異常を自動的に検知、修復する自己修復制御の、一般化と知能化をすすめている。この自己修復制御は、従来の故障検知機能付きの耐故障制御と比較して以下の利点をもつ、すなわち、故障検知に制御対象の数学モデルを必要としない、固着型などこれまで検知が困難とされた故障を検知することができる、検知に要する最大時間を事前に任意に設定することができる、などが挙げられる。前年度までの研究成果から、これらの利点を失うことなく、制御理論の一般化と知能化が図られ、自己修復制御の適用範囲が飛躍的に拡大された。ただ、バックステッピング法の導入により、高次の相対次数をもつ制御対象に対して、制御構造が爆発的に複雑化する問題や、複数の入出力をもつ多入出力系への適用、さらに、実際のシステムへの応用問題などが未解決のままであった。そこで、本年度は、バックステッピング法の代わりに、並列補償器を用いて相対次数を補う方法ついて考察を行った。これにより、制御構造の複雑化を避けることができ、また、共振現象をうまく利用して故障を検知する方法を見出すことができた。さらに、多入出力系については、分散型自己修復制御系設計法を与え、入出力の数に分割された各サブシステムで、独立した故障検知と修復制御が達成できることを示した。これに加え、知能化への新しいアプローチとして、神経細胞などの活動電位の振る舞いを模倣するスパイキングニューロンモデルを故障検知器として利用する方法についても検討を重ねている。なお、自己修復制御の実システムへの応用として、垂直多関節型マニピュレータのバイラテラル制御系への適用を計画していたが、これに関しては、手先部のみについて、異常検知機能の実装を行い、その有効性を実験で評価している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
理論と応用の各面の進捗について、理論面では、制御器設計における相対次数の制約緩和とそれに伴う故障検知器の再設計、適応制御などの導入による知能化で成果を得ており、さらに、多入出力系への拡張にまで踏み込んだ考察を行っている。当初の計画はほぼ達成されたと言ってよい。一方、応用面では、垂直多関節型マニピュレータのバイラテラル制御系への適用とその実機での有効性の評価を計画していたが、予定されていた実験システムの完成が間に合っておらず、計画を達成できていない。ただ、アームの手先部のみについては、異常検知機能を付加したバイラテラル制御系を構築することができ、実験により検知性能や操作性、安定性などが評価できている。
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Strategy for Future Research Activity |
垂直多関節型マニピュレータのバイラテラル制御系の実験システムを完成させ、これに自己修復制御理論を適用し、その検知性能や、マスタ・スレーブとしての操作性能、制御系の安定性などを実験により評価する。その上で、自己修復制御理論の未解決問題や実用化を見据えた課題について検討をすすめる。具体的に、例えば、検知可能な故障のクラスがやや限定的である問題や、検知器、制御器の構成にセンサ信号の微分値が必要となる問題、さらに、外乱・ノイズに対するロバスト性の問題などが残されており、今後は、理論と応用の両面からこれらの解決を図っていきたい。
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Causes of Carryover |
(理由)実験装置(垂直型多関節マニピュレータのバイラテラル制御系)の完成に遅れが生じており、また、国内外の学術会議の開催と成果公表の時期が合わず、会議への参加および学術雑誌への投稿ができなかった。 (使用計画)次年度の物品費、旅費等に組み込み、これらを実験装置の完成に必要な物品の購入や国内外の学術会議への参加の旅費にあてたいと考えている。また、研究成果を学術論文としてまとめ、掲載費にあてる予定である。
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