2016 Fiscal Year Research-status Report
鉛直・水平補剛材に重度の腐食損傷を受けた鋼桁腹板のせん断耐荷力評価と機能回復技術
Project/Area Number |
16K06472
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
有住 康則 琉球大学, 工学部, 教授 (90109306)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下里 哲弘 琉球大学, 工学部, 准教授 (90452961)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 鋼橋 / 腐食損傷 / 残存耐荷力 / 機能回復 / 補修補強 / 耐荷力実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、初めに下フランジ、腹板及び鉛直補剛材の腐食により下フランジ溶接部に腐食損傷による破断が生じた鋼I 桁のせん断耐荷力特性の検討を行い、次に破断損傷部の補修法として当板ボルト補修、腹板の腐食減肉の補修に炭素繊維補修を適用した場合の鋼桁端部のせん断耐荷力の回復効果、変形性能の保持効果に対する評価検討をせん断耐荷力実験により行った。 1.せん断耐荷力実験に用いた供試体は、腹板の上下にフランジをすみ肉溶接したI形断面桁の中央に500mmの間隔で垂直補剛材を配置し、垂直補剛材と上フランジの4辺で囲まれた腹板(板厚4.5mm)が腐食破断着目パネルとした.載荷実験では、供試体の両側に載荷桁を高力ボルト接合し、2点載荷・2点支持することにより着目パネルにせん断力を与えた.実験では、健全モデル試験体と腹板と下フランジの境界部の破断と腹板と鉛直補剛材境界部の一部が腐食損傷により破断(DLモデル)した試験体を制作した。なお、腹板に実橋から採取した腐食板を用いた腐食損傷試験体も同時に制作した。 2.下フランジと腹板の境界部の破断と腹板と鉛直補剛材境界部の一部が破断した試験体は、健全モデル試験体と比較してせん断耐荷力が47%低下した。また、健全モデルではウェブの対角線上に斜め張力場が形成されるのに対して、DLモデルでは切上の上部を始点とする張力場が形成された。 3.補修は当板ボルト(SS400 材)で補修した場合と、 腐食した腹板に炭素繊維(設計厚さ0.167mm、引張強度3400MPa)を併用した場合の2種類について補修法の検討を行った。DLモデルに対する当板ボルト補修モデルでは、健全相当の耐荷力の回復と十分なダクタリティが得られた。一方、当板ボルト補修に腹板を炭素繊維補修したモデルでは、健全相当のせん断耐荷力が得られたが、その後の炭素繊維の剥離によりダクタリティの低下が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
腐食損傷した鋼I 桁の腐食による下フランジとウェブとの溶接近傍での腐食損傷破断が鋼桁のせん断耐荷力性能に及ぼす影響を検討するためせん断耐荷力実験を行い評価し、同時に、破断損傷部の補修法として当板ボルト補修、腹板の腐食減肉の補修に炭素繊維補修を適用した場合について,補修法に対する桁端部のせん断耐荷力の回復効果,変形性能をせん断耐荷力実験を行い評価した。研究の進捗状況は、おおむね計画通りに順調に進展しているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
腐食損傷した鋼桁について、腹板に実腐食減厚分布を適用し、鉛直及び水平補剛材の腐食断面欠損及び腐食亀裂損傷タイプを種々変化させパラメトリック耐荷力解析を行い、腐食断面欠損及び腐食亀裂損傷タイプが鋼桁のせん断耐荷力(残存耐荷力)に及ぼす影響について解析的に検討を行う。解析では、実験供試体をアイソパラメトリックシェルでモデル化し、弾塑性有限変位理論に基づいて数値解析を行う。解析は、汎用構造解析プログラムMSC MARCを用いて行い、要素は8節点厚肉曲面シェル要素を用いる。腐食による腹板の板厚減少量は要素の板厚を変化させ考慮する。 実験結果及び解析結果を総合的に判断し、鉛直補剛材と腹板接合部の腐食断面欠損及び腐食亀裂損傷、下フランジと腹板が同時に腐食断面欠損及び腐食亀裂損傷した場合を想定し、補修・補強方法(当て板ボルト工法、高強度鋼板接着補強工法、腹板対角方向への補剛材接着補強工法との併用、FRP接着補強工法等(ボルト併用方式を含む))を提案し、実腐食鋼I桁を用いて実物大供試体に補修・補強を施し、耐荷力実験を行い、更に、上記弾塑性有限変形理論に基づいた解析手法を用いて耐荷力解析を行い、補強により必要性能が回復しているか実験及び解析的に確認を行う。
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Causes of Carryover |
当初研究内容の発表を県外で行われる研究会で発表予定であったが、琉球大学で開催された研究会に変更し研究発表を行ったため旅費に残額が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は実験等の物品費として使用予定である。
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