2016 Fiscal Year Research-status Report
有明海再生を可能にするフルボ酸鉄シリカ資材による干潟浄化実証研究
Project/Area Number |
16K06557
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
渡辺 亮一 福岡大学, 工学部, 教授 (50299541)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浜田 晃規 福岡大学, 工学部, 助手 (30751870)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 干潟再生 / アサリ / フルボ酸鉄シリカ / 二枚貝 / 浄化 / 環境修復 |
Outline of Annual Research Achievements |
有明海に流れ込む河川では高度経済成長期以降,治水事業として砂利採取やダム建設が相次ぎ,アサリが育つうえで必要な砂の流入が減少し,有明海はヘドロ化した泥混じりの干潟が増加した.加えて,豪雨により河川から大量の泥が流れ込んだことも影響を与えていると言われている. 特に2012年7月の九州北部豪雨では大量の淡水と泥が川から流れ込み,福岡県でもアサリの生息密度が高い矢部川河口の沖合2~3kmに10cm以上の泥が堆積した.熊本県でも白川や菊池川の河口の一部で,20~70cmの泥が堆積したと言われている.アサリの漁獲量は有明海を囲む4県で1983年の約90,000tから近年では10,000tを下回っており,タイラギ漁は福岡県と佐賀県で5季連続の休漁となった.有明海のアサリの漁獲量の激減は有明海の環境問題の1つとして社会的問題となっている. 対策として,別の場所から採取した海砂を海底にまく覆砂事業があるが,莫大なコストがかかる上,砂の量にも限りがあるため永続的に実施することは難しい.また,底泥を除去する浚渫事業もあるが,こちらもコストが莫大になってしまうことに加え,作業により巻き上がった底泥によって濁水を生じさせる可能性がある.そこで,本研究では,覆砂・浚渫事業よりも安価に入手でき,微生物の分解反応を促進する効果が期待されている「フルボ酸鉄シリカ資材」の投入によるヘドロ浄化効果について検証を行っている.この実証的な検証によって、フルボ酸鉄シリカ資材投入区においては、アサリの生息環境が大幅に改善されることが明らかになって来ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在、熊本県玉名郡長洲町干潟で行っている現地実証実験により、フルボ酸鉄シリカ資材を設置した試験区においてアサリの生息状況が大幅に改善していることと、本申請研究内容に関して干潟再生工法として特許申請を行っている。これまでに得られた観測および分析結果より、本手法を用いることによって有明海干潟の環境改善が進むことが確認されている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、1年目に成果を引き続き確認し、工法の技術レベルを更に向上させるとともに、フルボ酸鉄シリカ資材の濃度実測などを行い、本工法の更なる普及を目指して、研究活動を当初の予定通り進行させていく。また、前年度購入した水槽を継続的に使用して、室内実験による理論的な意味づけを深めていく予定である。
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Causes of Carryover |
本年度、フルボ酸鉄シリカ資材を現場の干潟に投入し、実証研究を実施している段階で、2回目の資材の投入時期に関して、得られた観測データから検証を行ったところ、次年度の7月に追加投入を行うことが妥当であると判断されたため、追加資材購入費分を次年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度、使用しなかった391,375円を次年度の追加資材購入費として、資材を2017年7月を目途に購入する。
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