2017 Fiscal Year Research-status Report
低強度コンクリートに後施工したアンカーのせん断試験装置の開発と伝達せん断力の評価
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16K06567
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
小林 克巳 福井大学, 学術研究院工学系部門, 特命教授 (40150297)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 鉄筋コンクリート / 低強度コンクリート / あと施工アンカー / せん断試験装置 / せん断剛性 / 原位置試験 / 品質管理 / 施工管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
コンクリート境界面にあと施工アンカーを施工し、境界面にせん断力のみが作用して曲げモーメントと圧縮力が作用しない状態の一面せん断実験を再度実施し、平成28年度に試作したせん断試験装置の特性を把握するための比較データとした。 凸部品と凹部品を互いに平行にスライドするように組み合わせた試作装置に試験アンカー筋を密着させて試験をする場合、施工誤差の影響が大きくなる。試験精度を向上させるためには、一対の試験アンカー筋がコンクリート面に鉛直かつ平行であることが重要である。そのために、穿孔冶具と接着樹脂が硬化するまでの試験アンカー筋保持冶具を試作した。 既存建物の低強度コンクリートについては、調合における単位水量の影響が大きいと判断し、ベースコンクリートに加水を行うことにより、圧縮強度28~16 N/mm2の低強度コンクリート塊を製作した。これにあと施工アンカーを施工し、試作装置でせん断試験を行うとともに、コンクリートの圧縮強度、割裂引張強度、ヤング係数、応力度・ひずみ度特性などのデータを得た。さらに、加水を行うことにより圧縮強度12~8N/mm2の低強度コンクリートを製作できることを、円柱供試体レベルで確認したが、圧縮強度12~8N/mm2までを対象としたせん断試験は未実施であり、平成30年度初めに実施予定とする。 試作装置によるせん断試験結果および材料試験結果を用いて、低強度コンクリートを対象としたSD345異形鉄筋を用いた接着系あと施工アンカーのせん断力・水平変形関係を暫定的に定式化した。コンクリートのヤング係数は圧縮強度に比例しており、試験データのばらつきを考慮すれば、主にアンカー筋強度、アンカー筋径、コンクリート圧縮強度で実用的な定式化ができそうである。これにより、変形を考慮したあと施工アンカーの有効せん断強度を求めることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度に精密機械加工部品を組合わせて試作したせん断試験装置は機能的に十分で、SD345のD19、D16、D13、D10を用いて約100本のせん断試験を行い、12体の一面せん断実験結果と比較して、試作装置の特性把握およびデータの蓄積ができている。 低強度コンクリートについては、加水したコンクリートの分離状態がなくなるのを待って打設することにより圧縮強度16N/mm2 まで製造してせん断試験を実施し、データを得ることができた。さらに加水量を増やして、圧縮強度8N/mm2までの低強度コンクリートを製造する予定であったが、1月および2月の大雪によりコンクリート打設が長期間できない状態となり、平成30年度に先送りせざるを得なくなったが、低強度コンクリートの製造方法、穿孔冶具、試験アンカー筋保持冶具、せん断試験装置、変形測定冶具などすべて準備できているので、コンクリート材令さえ確保できれば短時間に実施でき、平成30年度の研究計画には殆ど影響ないと思われるので、おおむね順調に進展していると評価する。 あと施工アンカーのせん断力・水平変形関係を暫定的に定式化しているが、さらに低強度コンクリートでのデータを増やすことにより、変形を考慮した有効せん断強度を知ることができる見通しを得た。過去に低強度コンクリート既存建物の耐震補強設計を担当した構造設計者とも協力関係を築ける見通しが出来たので、本研究はおおむね順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、平成29年度に予定していて、大雪のために実施できなかった圧縮強度12N/mm2、8N/mm2 を含めて28~8N/mm2のコンクリートに対するせん断試験を、試作せん断試験装置を用いてD10、D13、D16、D19について行う。あわせて一面せん断試験と対応させるために、コンクリート面からの試験装置の浮かせ高さについても再検討を行う。平成29年度の圧縮強度28~16N/mm2の範囲のデータと合わせて、せん断力・水平変形関係を定式化しなおす。 あと施工アンカーを介して耐震補強部材へ伝達しているせん断力の大きさが明解に分かっている実験結果があればそれを利用し、本研究による試験装置を使用して得た情報とあと施工アンカーの変形を考慮した伝達せん断力の一般化した評価式を用いれば、既存構造部分と耐震補強部材との水平力分担率が精度よく求まり、合理的な耐震補強設計ができることを確認する。利用できる実験結果が無ければ、耐震補強部材取付け工法を想定し、耐震補強部材へ伝達しているせん断力の大きさを知ることができる工夫をした載荷実験を実施し、既存構造部分と耐震補強部材との水平力分担率が精度よく求まることの検証用データとする。 試作せん断試験装置は意図したとおり原位置で簡便に使用することが可能であり、あと施工アンカーの設計だけでなく、施工管理にも使用できることから大いに社会的意義を有することになり、試験アンカー筋の施工から試験結果の評価まで、試験方法の取りまとめを行う。 実務設計者の協力を得て、耐震補強実施済の低強度コンクリート建物の耐震補強設計に対する安全性の再検証をする。耐震補強設計の精度と信頼性が高まることを確認し、研究レポート、国内外論文誌、国内外におけるセミナー等を通じて、建築構造研究者および設計者に向けて情報発信する。
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Causes of Carryover |
穿孔冶具と試験アンカー筋保持冶具については、当初木製として検討を開始し、次に溶接組立て構造で機能性の確認を行い、最終的に機械加工材の組立て構造とする設計を行った。機械加工材の発注までは平成29年度中に行ったが、機械加工材の納品が年度内に間に合わず、平成30年度当初の購入となったため未使用額が生じた。1月、2月に製作予定であった圧縮強度8N/mm2 までの低強度コンクリート塊製造およびせん断試験が、豪雪の影響で長期間できなくなり平成30年度に先送りとしたため、予定していた試験体製作費および試験実施経費の未使用額が生じた。また、これに関連して、平成28年度および平成29年度に使用したコンクリート塊の廃棄処理を、費用的な効率を考えてまとめて行う予定であったが、これができなくなり廃棄物処理費用の未使用額が生じた。アンカー筋を施工するための接着剤については、接着剤の製造会社からサンプルとしての提供を受けることができたので、その購入費用が不要となった。 未使用額は、平成30年度当初における穿孔冶具および試験アンカー筋保持冶具製作のための機械加工材の購入費、低強度コンクリート試験体製作とせん断試験実施経費、試験済コンクリート塊廃棄処理費用に充てる。さらなる残額があれば、標準試験法を目指して、試験方法のとりまとめの経費に充てたい。
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Research Products
(2 results)