2017 Fiscal Year Research-status Report
膨張モルタルを用いたコンクリート構造物の静的破砕工法に関する基礎的研究
Project/Area Number |
16K06585
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Research Institution | Institute of Technologists |
Principal Investigator |
大塚 秀三 ものつくり大学, 技能工芸学部, 准教授 (00458605)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 解体工法 / コンクリート用膨張材 / 膨張モルタル / 膨張圧 / 温度依存性 / 充填径 / 小型試験体 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は,大別して次の3項目について検討した。実験Ⅰ:エトリンガイト系のコンクリート用膨張材を用いた膨張モルタル(以下,エトリンガイト系膨張モルタル)の膨張挙動および温度性状に関する検討,実験Ⅱ:石灰系のコンクリート用膨張材を用いた膨張モルタル(以下,石灰系膨張モルタル)における環境温度の相違が膨張モルタルの膨張挙動および温度性状に及ぼす影響に関する検討,実験Ⅲ:石灰系膨張モルタルを埋設した無筋および有筋の小型試験体における破砕性状に関する検討 実験Ⅰでは,昨年度に対象とした石灰系膨張モルタルの性状と比較するために,エトリンガイト系膨張モルタルを用いて検討した。その結果,同量の混入量において石灰系膨張モルタルの方がエトリンガイト系に比べて,膨張圧が顕著に大きくなる一方で,反応に伴う最高温度が低くなる傾向を明らかとした。 実験Ⅱでは,石灰系膨張モルタルを用いて季節による環境温度(5,20,35℃の3水準)の相違に着目して検討した。その結果,環境温度が高くなるほど膨張圧および最高温度が比例的に大きくなる傾向を確認したが,最高温度は35℃環境下においても45℃程度に抑制されたことから作業の安全性を損なわない程度の温度上昇であることを確認した。 実験Ⅲでは,石灰系膨張モルタルを配筋方法の異なる有筋の小型試験体に埋設径(φ38,50,100mmの3水準)を変えて埋設し,同寸法の無筋小型試験体における破砕性状との比較を行った。その結果,鉄筋の有無によらず埋設径が大きくなるに従って破砕に要する時間が短縮されるとともに,小型試験体に生じたひび割れの本数およびひび割れ幅が大きくなることを明らかとした。一方,鉄筋の容積に比例して破砕しにくくなり,埋設径がφ38mmの場合にはコンクリート用膨張材の混入量が小さいと小型試験体の破砕に至らない場合のあることを明らかとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前項で述べた3項目の実験について計画通りに着手し,概ね予想されたデータの取得することができた。実験Ⅰでは,市販されているコンクリート用膨張材の代表的な2種について比較検討し,石灰系膨張モルタルの方がエトリンガイト系膨張モルタルに比べて,膨張圧が高く,かつ反応に伴う温度上昇を抑制できる点から解体工法への適用性が高いことを明らかとした。実験Ⅱでは,石灰系膨張モルタルの反応機構の温度依存性を確認し,膨張圧および最高温度が過大となる夏季においての施工の安全性を確保できる可能性を確認するとともに,冬季においても所要の膨張圧を発現できることを確認した。実験Ⅲでは,有筋の小型試験体を用いた検討により,膨張モルタルの埋設径および調合の制御によって,実大レベルの部材において破砕できる可能性の一端を見出した。以上の知見は,実構造物における膨張モルタルを用いた解体工法の有効性の一端を示すものと考えられ,次年度に予定する実大レベルの部材における有効性検証の手掛かりを得られたものと考える。一方で,一定の条件下における破砕性状をより精緻に確認するために実験の水準数を抑制したため,当初計画していた小型試験体の寸法および鉄筋量の変化に対する影響については網羅的な検討には至っておらず,次年度に予定する実大レベルの部材を用いた検討と併せて検証していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は,平成28~29年度で得られた知見を基盤として,無筋および有筋の実大レベルの部材を対象に石灰系膨張モルタルの埋設による破砕性状に関して大別して次の2項目について検討する。(1)スラブを模擬した試験体における膨張モルタルの埋設位置および埋設径の相違における破砕性状の検討,(2)梁を模擬した試験体における膨張モルタルの埋設深さおよび埋設径の相違における破砕性状の検討 以上の実大レベルの各種部材を模擬した試験体における破砕性状の観察から,部材の配筋状態および寸法の相違に応じた最適な膨張モルタルの埋設方法についての方向性をとりまとめる。
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Causes of Carryover |
平成29年度の小型試験体を用いた実験(実験Ⅲ)では,一定の条件下における破砕性状をより精緻に確認するために試験体の水準数を抑制したため,当初計画していた小型試験体の寸法および鉄筋量の変化に対する影響については網羅的な検討には至らなかった。そのため,小型試験体の作製に掛かる資材の消耗品費が発生しなかった。 平成30年度は,これまでに得られた知見を基盤として実大レベルの部材を用いた検討に移行する。そのため,実大レベルの各種部材の作製に掛かる資材の消耗品費として予算処理する。
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