2017 Fiscal Year Research-status Report
震源近傍の強震動予測手法の開発と工学的利活用に関する研究
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16K06586
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
久田 嘉章 工学院大学, 建築学部(公私立大学の部局等), 教授 (70218709)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高井 伸雄 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (10281792)
重藤 迪子 九州大学, 人間環境学研究院, 助教 (90708463)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 震源近傍強震動 / 強震動予測手法 / 地表地震断層 / 強震動予測レシピ / 指向性パルス / フリングステップ / 2015年ネパール・ゴルカ地震 / 2016年熊本地震 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の計画である、1)既存の震源逆解析結果の整理と震源近傍に適応可能な強震動予測手法の開発、2)2015年ネパール・ゴルカ地震(Mw7.8)の震源断層直上の強震動特性と震源逆解析の整理に加えて、2016年度には、3)2016年熊本地震の発生に伴い、この地震の活断層近傍の強震動記録の解析、震源逆解析結果の整理、および、地表地震断層の極近傍における建物被害調査を実施し、震源近傍の強震動特性と建物への影響に関する新たな知見を整理した。 2017年度には、1)の成果概要として、2016年度に整理した地震断層近傍の観測記録と震源逆解析結果を用いて地震発生層以浅に適用可能なすべり速度時間関数モデルを提案し、様々な強震記録の再現などでモデルの検証を実施した。次に、2)の2015年ネパール・ゴルカ地震の本震記録に関して,2016年度の被害や強震記録に関する調査結果と既往インバージョン結果をもとに,長時間幅パルス地震動に影響を与える小断層部分を抽出できた。最後に、3)では、2016年熊本地震の地表地震断層の近傍の強震記録と建物被害調査の結果より、熊本地震の震源モデルの構築と強震動の再現、および被害調査結果との整合性を調査した。その結果、同じ断層近傍でも益城町では建物に大被害を生じたのに対して、益城から3 km程度しか離れておらず地表地震断層のごく近傍の下陳では、地震動による建物の大被害は殆ど生じなかったことを明らかになった。さらに、その原因を調査し、両地域における表層地盤の増幅特性の違いに加えて、震源断層からの地震動の放射特性の違いも起因することを明らかにした。 得られた諸成果は、2017年12月に実施した研究会により研究分担者・協力者による互いの成果を発表するとともに、日本建築学会、日本地震学会、日本地震工学会、などの関連学協会で公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画である2015年ネパール・ゴルカ地震(Mw7.8)の震源・地盤モデルの解析を行い、ゴルカ地震の本震記録に関して既往インバージョン結果をもとに、長時間幅パルス地震動に影響を与える小断層部分を抽出できたことで、岩盤観測点におけるパルス性地震動の再現が行えた。また岩盤観測点近傍の堆積層上の観測点での記録を再現するために、中小地震の観測記録を用いて直下の速度構造モデルを推定し、国際誌に公表に至っている。加えて、2016年に発生した熊本地震を契機として、活断層近傍の貴重な強震記録・震源モデル、および現地で実施した地表地震断層の極近傍の建物被害調査を実施した。その結果、地震発生層以浅に適用可能なすべり速度時間関数モデルを提案し、様々な強震記録の再現などでモデルの検証を実施することができた。その成果は震源近傍での強震動動予測モデルの策定に大いに寄与することができた。さらに地表地震断層の直上であっても耐震性能の高い建物には大破・倒壊に至るような大きな被害は生じていないことを確認し、活断層の近傍における建物の耐震対策に対する地震工学として重要な成果を得ることができた。それらの成果を地震学・地震工学・建築学に関連する多くの学協会で公表し、様々なメディアにも採りあげられた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、まず2017年度に試作したM7クラスの地震の震源近傍に適用可能な強震動予測モデルを用いて様々な地震の震源近傍の強震動を計算し、観測記録等との比較検討からモデルの改善を行う一連の作業を実施する。次にM8クラスの地震として、2015年ネパール・ゴルカ地震における約10kmの深さの震源断層から出された長時間幅パルス地震動が、堆積盆地へ入力することにより、長周期構造物に脅威となる地震動に関し、理論・数値計算により精査することで、カトマンズ盆地と同様なテクトニック環境下での設計様入力地震動像を議論する。最後に、構築した強震動予測モデルを用いて、首都直下地震や南関東地震など様々な想定地震に適用して広帯域の強震動を計算し、従来の強震動予測モデルや想定結果との比較検討を行い、設計・検証用地震動への適用方法の検討、建物への影響の評価、地震被害想定への活用などを実施する。得られた全て成果は関連学会に加え、最終報告会などにより公表する。
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Causes of Carryover |
熊本地震・グルガ地震での現地情報収集の追加予定があり、さらに、最終年度の論文等の成果発表用の残額とした。
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