2017 Fiscal Year Research-status Report
天然繊維強化植物由来エンプラ系複合材料の界面接着性および分散性技術の構築
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16K06750
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
西谷 要介 工学院大学, 工学部, 准教授 (30439260)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | バイオマス / 複合材料・物性 / 材料加工・処理 / 環境材料 / グリーンコンポジット |
Outline of Annual Research Achievements |
エンジニアリングプラスチック(エンプラ)に匹敵する機械的性質や耐熱性を有する高性能かつ環境性能に優れた材料を開発するために,強化繊維およびマトリックス樹脂ともに植物由来原料を用いた天然繊維強化植物由来エンプラ系複合材料の創製に必要な繊維/樹脂間の界面接着性および複合材料中における繊維分散性の技術を構築することを目的に検討している.具体的には,1.天然繊維コーティング技術,2.天然繊維の分散性技術,3.天然繊維/樹脂間の界面制御技術,および4.天然繊維強化植物由来複合材料のレオロジー的性質評価の4つを同時に検討したものである.平成29年度にこれらを検討した結果,主な成果として以下の知見を得た. (1)マレイン酸変性樹脂の溶融混練(天然繊維と樹脂を溶融状態で混ぜ合わせる試料成形方法)時による直接添加の影響を実験的に検討した結果,マレイン酸変性ポリプロプレンの添加によりヘンプ麻繊維の分散性や界面接着性を向上させることを明らかにした.特に,前処理としてアルカリ処理およびシランカップリング剤の両者の表面処理を施した繊維とマレイン酸変性ポリプロピレンの併用により,繊維分散性や界面接着性を大きく変化させ,その結果,各種物性も改善できることがわかった. (2)溶融混練時に使用する二軸押出機のスクリュパターンを変更(具体的には混練力を向上させるスクリュピースを増加)することにより,天然繊維の分散性および繊維/樹脂間の界面接着性が変化することを明らかにした. (3)天然繊維の分散性および繊維/樹脂間の界面制御技術を汎用化するために,ヘンプ麻だけでなく,サイザル麻,ジュート麻およびラミー麻繊維についても,アルカリ処理およびシランカップリング剤の両者の表面処理を施した系を成形して,各種物性だけでなく,繊維分散性や界面接着性なども評価した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
天然繊維強化エンプラ系複合材料の高性能化を図るために必要な1.天然繊維コーティング技術を中心に,これら複合材料の創製に密接に関連する2.天然繊維の分散性技術,3.天然繊維/樹脂間の界面制御技術および4.レオロジー的性質の4点を同時に検討し,基本的には申請時の計画通りに進捗している.特に,前年度検討したマレイン酸水溶液による天然繊維コーティングによる繊維分散性や界面接着性が良好であったため,より簡便な界面制御技術の構築として,当初計画にはなかったカップリング剤(マレイン酸変性ポリプロピレン)の溶融混練時による直接添加についても検討することにより,繊維分散性や接着性を大きく変化させることができ,また各種物性も顕著に改質することができた.また,スクリュパターンの影響をはじめとした成形方法による手法や,天然繊維の種類の違いなども順調に検討できている.ただし,ヘンプ麻以外の各種天然繊維についてはシランカップリング剤を用いた表面処理のみの検討となっており,成形方法や各種表面処理技術を組み合わせた検討も今後必要と考える.したがって,おおむね順調に進んでいると判断している.
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は,前年度までの検討結果を踏まえ,1.天然繊維のコーティング技術の確立,2.天然繊維の分散制御技術,3.天然繊維/樹脂間の界面制御技術および4.レオロジー的性質評価の4つを継続して同時に検討することで,天然繊維の分散性技術や繊維/樹脂間の界面制御技術を構築していく. 具体的には,これまでの検討結果を踏まえ,各種表面処理技術や成形方法などを組み合わせ,また処理条件などの最適化を図ることで,より高性能な材料を開発できるように進めていく.特に,ヘンプ麻以外の各種天然繊維についても同様な検討を進め,これら天然繊維の分散性や繊維/樹脂間の界面接着性などの界面制御技術の汎用化も進めていく. なお,これらの成果を取り纏め,国内外の学協会での学会発表や査読付き論文などへの投稿など,積極的に外部に発信していく予定である.
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Causes of Carryover |
旅費およびその他の直接経費として予定していた論文投稿費や論文印刷費などが予定よりも少額で済んだため.
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Remarks |
展示会(イノベーション・ジャパン2017~大学見本市&ビジネスマッチング~,東京ビックサイト,2017年8月31日~9月1日,題目「環境に優しい総植物由来原料を用いたエンプラ系複合材料」)への出展
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