2017 Fiscal Year Research-status Report
フェノール誘導体と 導電性高分子との複合化によるフレキシブル透明導電膜材料の開発
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16K06762
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Research Institution | Nagoya Industrial Science Research Institute |
Principal Investigator |
小長谷 重次 公益財団法人名古屋産業科学研究所, 研究部, 上席研究員 (30418785)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 邦生 岡山大学, 環境生命科学研究科, 教授 (40274013)
真田 和昭 富山県立大学, 工学部, 教授 (20363872)
守谷 せいら (森棟せいら) 中部大学, 工学部, 助教 (30748942)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | PEDOT / 導電性高分子 / セカンドドーパント / フェノール誘導体 / 導電性向上 / 溶解度パラメーター / 透明導電 / グリコール |
Outline of Annual Research Achievements |
スマートフォンやパソコンのタッチパネルには透明導電材料が使用されている。現在、透明導電材としてはスズドープ酸化インジウム(ITO)が最も一般的であるが、原料であるインジウム(In)の資源不足、供給不安定性の点から、ITO代替品が求められている。ITO代替材としては銀粒子・ナノワイヤ、ナノ炭素(CNT、グラフェン)、導電性高分子が注目されている。その中で導電性高分子ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)が有望であるが、ITO代替品としては導電性が不足している。 筆者らはPEDOT:PSSの導電性向上剤(セカンドドーパント)として特殊なフェノール誘導体を見いだし、さらに導電性向上能を有するフェノール誘導体の探索、新規フェノール誘導体の設計・合成、そして導電性向上作用メカニズム・シミュレーションの検討を行っている。 多種類のモノオール、ジオール化合物、フェノール誘導体のPEDOT:PSS導電性向上効果を検討し、以下の結論を得た。 ①モノオール化合物には導電性向上効果はないが、ジオール化合物には導電性向上効果が大きい。この導電性向上効果には化合物の沸点も関わり、さらには溶解度も大きく関わると推定される。すなわち溶解度パラメーター(SP)が14から16あたりのジオール化合物が導電性向上効果が大きい傾向がある。導電性向上効果の大きいフェノール化合物もSP値は14から16を有する。 ②PEDOT:PSS/フェノール化合物(ビスヒドロキシジフェニルスルホン)の混合物を溶融性アクリル粒子合成系へ添加することにより透明導電複合材料の開発を進め、現在分散性改良をめざし合成条件を検討している。 ③上記導電性向上のメカニズム解明を目的にコンピューターシミュレーションの検討を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
①PEDOT:PSSの導電性向上に最適なフェノール誘導体の構造及び特性がやや不明確で、さらなる解析が必要である。 ②導電性高分子ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)の新規セカンドドーパントとして、電子求引性基(例えばスルホン酸基)結合フェノールを成分としたポリアミドナノ粒子、あるいはビス(ヒドロキシフェニルスルホン)の結合したセルロースナノファイバーの合成を試みているが、製法の検討にとどまり、次年度も引き続き合成を試みる。 ③PEDOT:PSS/フェノール誘導体の複合化を目指したバインダー材の探索が予定より遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
①PEDOT:PSSの導電性向上剤であるフェノール誘導体のSP値が非常に重要であることを掴んだが、SP値解析ソフトを用いて、SP値をさらに細かく因子分離し、いかなる因子が導電性向上に関与しているか明らかにする。同時にフェノール性OH基の酸性度も導電性向上に関与している可能性が大きいので、種々のフェノール誘導体の酸性度と導電性向上効果との関係を検討する。また、PEDOT:PSSとフェノール誘導体との相互作用をIRやUV-Visスペクトルを用いて分光学的に検討する。最終年度的には、これらの解析データをもとに導電性向上に最適なフェノール誘導体の化学構造、特性を明らかにする。 ②新規な導電性向上剤として、フェノール誘導体結合セルロースナノファイバー、フェノール結合ポリアミド粒子のスルホン化物の合成、評価を行ない、新規物質の探索に努める。 ③PEDOT:PSS/フェノール誘導体/(バインダー)アクリル粒子の複合化に最適な合成条件を検討する。また、シミュレーション結果を参考にして、バインダ種の選択、最適化を試みる。
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Research Products
(10 results)