2016 Fiscal Year Research-status Report
光音響・フォトルミネッセンス同時可視化技術による希土類フリーLED蛍光体の開発
Project/Area Number |
16K06779
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
深田 晴己 金沢工業大学, 工学部, 准教授 (90509176)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 蛍光体 / 光音響 / フォトルミネッセンス / 希土類フリー / 発光 / 非発光 / Bi / 酸化物 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度に実施された研究内容および得られた主な成果は次の通りである。 (1) 二波長励起方式光音響(PA)・フォトルミネッセンス(PL)同時測定システムの構築 蛍光体試料に定常光と断続光を同時に照射した場合の局所発熱の応答(PA信号)とPL信号をリアルタイムに測定できる二波長励起方式PA・PL同時測定システムを構築した。本システムの構築により、従来の単一波長励起方式のシステムを用いた測定よりも詳細な非発光過程の解析が可能となり、蛍光体内の欠陥や非発光中心の特定(欠陥準位の深さやその定量化)およびこれらへのエネルギー伝達過程のメカニズムを明らかにできる可能性が高まった。 (2) PA・PL同時測定による発光・非発光過程の可視化と高発光効率なBi付活酸化物蛍光体の開発 均一沈殿法もしくは錯体重合法により作製されたBiを発光中心とする酸化物蛍光体においてPA・PL同時測定を行うことにより、次のような知見が得られた。波長約303[nm]に発光ピークを有するY3Al5O12(YAG):Bi蛍光体では、波長約280[nm]~約340[nm]の領域においてPAスペクトルとPLスペクトルの重なりが確認されたが、波長約385[nm]に発光ピークを有するY4Al2O9(YAM):Bi蛍光体ではこのような重なりがほとんど認めらなかった。すなわち、YAG:Biでは輻射遷移による紫外発光のエネルギーの一部が蛍光体に再吸収され、結果的に無輻射遷移による熱として消費されるが、YAM:Biではこのような現象は認められず高い発光効率が得られることがわかった。さらに、このような傾向はYAM:Biに限定されず、母体としてMonoclinic構造を有する結晶を採用することにより、高い発光効率を有するBi付活酸化物蛍光体が得られることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二波長励起方式光音響(PA)・フォトルミネッセンス(PL)同時測定システムを構築し、本測定システムを使用してBi付活酸化物蛍光体におけるPAとPL信号の関係を明らかにした。特に、Monoclinic構造を有する母体結晶を採用することで、無輻射遷移による熱の放出が生じにくい、高い発光効率を有するBi付活酸化物蛍光体が実現できることを明らかにした。以上の理由により、本研究課題の進捗状況は概ね良好であると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)二波長励起方式光音響(PA)・フォトルミネッセンス(PL)同時測定システムの改良 平成28年度に立ち上げた二波長励起方式PA・PL同時測定システムの測定波長領域を約250[nm]~約2500[nm]まで拡張させる。なお、現状のシステムの測定波長領域は約250[nm]~約1200[nm]である。 (2)希土類フリー蛍光体のPA・PL同時測定による発光・非発光過程の可視化 BiやMnなどを発光中心とする希土類フリー蛍光体を作製し、単一波長励起もしくは二波長励起PA・PL同時測定を行い、非発光過程の明確化と発光・非発光過程の対応関係を明らかにする。例えば、単一波長励起測定で得られたPAスペクトルのピーク強度に対応する波長を定常光の波長とし、断続光の波長を約250~2500[nm]の範囲内でスキャンさせて測定を行う。また、蛍光体を高温・高湿下に一定時間放置した後にPA・PL同時測定を行うことで、蛍光体の劣化機構を明らかにする。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は消耗品の購入の一部を次年度に繰り越したためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主に蛍光体の合成に必要な消耗品(無機化合物、薬品類、ガス類など)や二波長励起方式PA・PL同時測定システムの改良に必要な消耗品(レンズ、ミラー、光学フィルターなど)の購入に充てる。
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Research Products
(6 results)