2016 Fiscal Year Research-status Report
水蒸気の直接噴射による水酸化物薄膜のスパッタ成膜プロセスの研究
Project/Area Number |
16K06788
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Research Institution | Kitami Institute of Technology |
Principal Investigator |
阿部 良夫 北見工業大学, 工学部, 教授 (20261399)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金 敬鎬 北見工業大学, 工学部, 准教授 (70608471)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 反応性スパッタ / 高速成膜 / 酸化物薄膜 / エレクトロクロミック |
Outline of Annual Research Achievements |
水蒸気を基板表面に噴射するためのガス供給系、および液体窒素を用いて-170℃程度まで冷却可能な低温用基板ホルダを作製し、現有のスパッタ装置の改造を行った。また、このスパッタ装置を用いて、金属NiターゲットをArと水蒸気の混合ガス雰囲気中で反応性スパッタし、酸化Ni薄膜を作製する実験を行った。 その結果、基板を冷却し、水蒸気を基板表面に噴射して作製した薄膜試料の堆積速度は、基板を冷却しない従来方法に比べて約10倍と大幅に増加することを見出した。これは、液体窒素で冷却した低温用基板ホルダ部に、チャンバ内の水蒸気が凝固したため、ターゲット付近の水蒸気分圧が低下し、Niターゲットがスパッタ率の高い金属状態となったためと考えられる。一方、基板表面には、水蒸気を噴射しているため、Ni酸化物薄膜が形成されたと考えられる。なお、基板温度を-170℃まで冷却すると金属Niと酸化Niの混合膜が形成されるが、-120℃から-80℃の温度範囲では、透明な酸化Ni薄膜が形成された。また、XRDとFTIRの測定より、透明な酸化Ni薄膜はアモルファス構造であり、膜中にOH基を含む水和酸化物、または水酸化物の状態であることがわかった。この酸化Ni薄膜のエレクトロクロミック特性を測定したところ、従来の室温で作製した試料に比べ、透過率変化幅が大きく、優れた特性を示すことを確認した。 以上の結果より、本研究で開発中の水蒸気噴射低温スパッタ法は、エレクトロクロミック特性の優れた酸化物膜の作製方法として有望であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水蒸気を基板表面に噴射するためのガス供給系、および液体窒素を用いて-170℃程度まで冷却可能な低温用基板ホルダを作製し、酸化Ni薄膜の成膜実験を行ったこと、また作製した薄膜試料で、優れたエレクトロクロミック特性を確認できたことから、本研究は、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在は、水蒸気を基板表面に噴射する実験を行っているが、次に水蒸気を金属ターゲット表面に噴射する実験を行う。この場合は、金属ターゲット表面に水酸化物層が形成されると予想されるので、基板上に形成される酸化物薄膜の化学組成や構造にも影響が表れるものと期待される。これにより、酸化Ni薄膜のエレクトロクロミック特性をさらに改善できないか検討する。 また、プロトン伝導性の水和Ta酸化物薄膜の作製に本研究の手法を適用し、そのイオン伝導特性に与える影響を検討する。
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Causes of Carryover |
実験の都合により、設備備品の一部(電気化学測定システム用のFRAボード)の購入を次年度以降に延期したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
酸化Ni薄膜のエレクトロクロミック特性に関する実験が終了した後、酸化Ta薄膜のプロトン伝導性に関する実験を行う。酸化Ta薄膜のプロトン伝導性を評価する際に、FRAボードを購入する予定である。
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