2016 Fiscal Year Research-status Report
光解離反応を用いる高耐久性ポリマー/ナノカーボン複合透明導電体の新規作製法の開発
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16K06834
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Research Institution | Chitose Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
高田 知哉 千歳科学技術大学, 理工学部, 准教授 (00342444)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 薫明 北海道大学, 歯学研究院, 助教 (40374566)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | カーボンナノチューブ / 高分子 / 複合材料 / 透明導電材料 / 光化学反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度には、側鎖に光解離基を有するポリスチレン誘導体(ポリ(p-クロロメチル)スチレン)とカーボンナノチューブ(CNT)を光反応により結合させた複合材料を作製し、材料中のCNTの分散法の確立、光反応に伴うポリマーとCNTとの結合形成の観察、作製された複合材料の導電性・透明性の評価を行なった。 ポリマー中のCNTの分散は、CNTに分散剤である塩化ヒドロキシルアンモニウムを吸着させて有機溶媒中に添加し、遠心分離して得られる上澄液(分散したCNTを含んでいる)をポリマー溶液に添加するという方法で行なった。この方法により高度にCNTが分散したポリマー溶液が得られ、成膜したポリマーにおいてもCNTが凝集せずに透明性を維持することが可能となった。 CNTとポリマーの結合は、CNTを添加したポリマー溶液への紫外光照射で生じるラジカル(ポリマー側鎖のC-Cl結合解離で生成する)のCNTへの付加により形成させた。X線光電子スペクトル(XPS)測定の結果、紫外光照射して得られる試料では未照射試料に比べてClの含有率が低く、Clの脱離が起こっていることがわかった。また、ラマンスペクトル測定の結果からは、紫外光照射後にCNTの構造変化が生じていることが確認され、これはポリマーとの混合物でのみ観察される(CNT単独では紫外光を照射しても構造変化しない)ことから、CNTへのラジカル付加により結合形成が起きていることが確かめられた。 得られた複合材料の導電性・透明性を調べたところ、CNT含量の増加に伴い電気抵抗と可視光透過率がともに低下することが確認された。このことは、CNTネットワークの形成による導電性の向上と、CNTの量の増加による光の吸収により予測される傾向と一致する。今後は、材料中でのCNTの分散状態をミクロなレベルで評価し、導電性および透明性との関連性を解釈することが課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画の段階で予定した、カーボンナノチューブのポリマー中での分散法を確立でき、可視光透過率の測定による分散状態の評価も行うことができた。また、光反応によるポリマーとカーボンナノチューブの結合形成の観察についても、XPSおよびラマンスペクトルの測定をにより確認することができ、紫外光照射の有無による違いも明らかにすることができた。 計画では、ポリマー中のカーボンナノチューブの分散・凝集状態を電子顕微鏡観察によって確認することを予定しており、着手したものの現時点では評価に耐えうるデータを得てはいないが、この課題については平成29年度の計画にも関わるものであり、継続して取り組むことで十分達成できるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度においては、平成28年度に確立した方法を用いて種々の条件でのポリマー/カーボンナノチューブ複合材料を作製し、カーボンナノチューブの分散・凝集状態を観察することを予定している。透過電子顕微鏡での観察を行うことになるが、試料作製方法や観察条件を最適化する必要があるため、専門家の技術補助を随時受けながら進めていく。また、得られた電子顕微鏡像の画像解析により、複合材料の導電性・透明性と分散状態の関連性を定量化する。画像から得られるデータと比較しうる実験データを得るために、試料の体積を正確に測定した上で電気抵抗率や光透過率を決める必要があるため、それらの測定手法の確立も必要となる。
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