2016 Fiscal Year Research-status Report
改良型トランスグルタミナーゼの近接依存反応を利用した複合タンパク質フィッシング法
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16K06865
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
後藤 猛 秋田大学, 理工学研究科, 教授 (10215494)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | トランスグルタミナーゼ / プロテオミクス / FRB / FKBP |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請研究は,改良を加えたトランスグルタミナーゼ(iTGase)を自身の触媒反応によって既知タンパク質(Bait:餌)に結合させ,得られたBait連結iTGaseのBaitに相互作用する未知タンパク質(Prey)をiTGaseの近接依存反応により蛍光標識して同定する新規なフィッシング法を開発することを目的とする。 その中心となるTGaseは,基質特異性が低く高反応性であることが望ましい。また,一般的にTGaseが正しく折りたたまれた活性体となるには,プロ配列を有するTGase前駆体として生産した後に活性化処理する必要がある。そこで,TGaseはStreptomyces mobaraensis由来ものとし,その前駆体のC末端にTGase反応性の高いリジン含有ペプチド(K)およびグルタミン含有ペプチド(N)を付加した二種類のiTGase前駆体について,そのコドンを最適化したcDNAを人工合成し,さらにBIC法によりBrevibacillus choshinensisを形質転換してそれぞれの分泌発現系を構築した。培養によって得られたiTGase前駆体を精製し,Dispase処理によってそれぞれ高活性なiTGase-K/Nを得た。さらに,牛乳カゼインをBaitのモデルタンパク質としてiTGase-Kの反応性を調べ,iTGase-Kは自己との架橋反応によりカゼイン連結iTGaseを生成することを確認した。 本フィッシング法の有効性を明らかにするため,ラパマイシンを介して会合することが知られているFRBとFKBPをBaitとPreyのモデルタンパク質とすることとし,これらを大量生産するためFRBおよびFKBPのcDNAを有する発現ベクターをそれぞれ作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画通り,TGase反応性の高いリジン含有ペプチド(K)およびグルタミン含有ペプチド(N)をC末端に有する二種類のiTGase-K/Nの前駆体のBrevibacillus分泌生産系を構築し,Dispaseによる活性化処理により,高活性なiTGase-K/Nを得ることが出来た。また,得られたiTGase-K/Nは,それ自身も基質となって他のタンパク質と自発的に連結出来ることを牛乳カゼインをモデルタンパク質として確認した。この自己架橋反応は本研究の大きな特色の一つであり,生物化学工学分野における興味ある成果と考える。 一方,Baitに連結させたiTGaseの近接依存反応によりPreyを蛍光標識してフィッシングする方法論の妥当性を証明するため,当初はsmall GTPaseとこれに特異的に結合するエフェクターRBD(Ras結合ドメイン)をモデル複合タンパク質とすることを予定していた。しかし,これらの哺乳動物タンパク質は高価であり,組換え体の生産も容易ではないことから,微生物による大量生産が可能な,ラパマイシンを介して会合するFRBとFKBPをモデルタンパク質にすることに変更し,それらの発現ベクターを構築した。この計画変更により,iTGaseの近接依存反応によるPreyの蛍光標識の可否は未だ確認できていないことから,「やや遅れている」との評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
組換えタンパク質の精製を容易にするために,市販ベクターのN末上流側にあるHisタグ配列を利用した。これにより前駆体は容易に精製されたが,その後の活性化処理によってHisタグ配列もプロ配列と共に除去されてしまうため,活性化後のiTGase-K/N の精製(Dispaseの分離除去)に課題が残った。そこで,当初の計画と並行して,iTgase-K/NのC末のKペプチドおよびNペプチドとの間にHisタグ配列を挿入させた発現ベクターを再構築する。タンパク質のリジンまたはグルタミン残基の近傍のHisタグ配列は,このタンパク質のTGase反応性を増加させることが報告されていることから,この改良は,iTGase-K/Nの自己架橋反応における基質としての性能を向上させることにもつながると思われる。また, Hisタグ配列はBaitとTGase間のスペーサーの役割も果たし,Preyの標識反応において有利にはたらく事も期待できる。 一方,組換え大腸菌を構築し,FRBとFKBPを大量生産する。得られたFKBPを用いて,iTGaseとの連結反応における選択性と収率の観点から架橋反応条件を検討する。また,FKBPにもTGase高反応性ペプチドを付加することの効果についても調べる。 得られたFKBP連結iTGaseを用い,ラパマイシン存在下におけるFRBの蛍光標識反応を調べ,iTGaseを利用したPreyタンパク質フィッシング法の妥当性を明らかにする。
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Causes of Carryover |
申請額よりも実際の配分額が減額されたこと,試薬等の消耗品の使用量が想定外に多かったこと等から,予定していた設備備品を購入することが出来なかった。なお,未購入の設備備品については既存の設備にオプション等を追加することで対応した。この設備備品とオプション等の金額の差が,助成金の使用計画と実際の使用額に大きな差が生じた主な原因である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
改変iTGaseの精製の容易さを考慮して改変iTGaseの分子設計を見直す予定であり,これは当初の計画と同時並行で進める。また,学内共通機器であるMALDI-TOF-MSの感度が著しく低下してデータの信頼性に問題があることから,外部機関の装置を借用することを計画している。これらにより追加発生する消耗品代や機器使用料に前年度繰越額を使用する予定である。
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Research Products
(2 results)