2016 Fiscal Year Research-status Report
分極改善に基づく高性能な微生物-酵素ハイブリッド型燃料電池の開発
Project/Area Number |
16K06880
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Research Institution | Osaka Prefecture University College of Technology |
Principal Investigator |
西岡 求 大阪府立大学工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (40304034)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉浦 公彦 大阪府立大学工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (00249814)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | バイオ燃料電池 / バイオマス / 電極反応 / 電気化学 / 微生物 / 電気培養 |
Outline of Annual Research Achievements |
酵母-グルコース系微生物燃料電池において,微生物・電極間の電子の受け渡しを行うメディエータ,アノード槽とカソード槽を仕切るプロトン交換膜,電極形状といったMFCの構成要素をそれぞれ変更し,電流-電位測定,長時間使用した際の出力測定を行った.メディエータには2-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノンより2-メチル-1,4-ナフトキノンのほうが適していた.プロトン交換膜としてはNafion膜,一価陽イオン選択透過性膜,陽イオン交換膜の中では,Nafion膜のみが安定した出力が得られた.また電極へのカーボンフェルト接着は内部抵抗の増大のため有効ではなかった.長時間運転では,メディエータとして最大出力値が高かった2-メチル-1,4-ナフトキノンが途中から急激に出力が低下し,2-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノンのほうが比較的安定して長時間出力が得られた. グリセリン系微生物燃料電池において,土壌および水圏より採取したグリセリンを単一炭素源として微好気的な環境で生育可能な微生物を用いて,電流-電圧測定により比較することで出力がより大きな菌株を選抜した.5種類の分離株を試験したところ、3種類について出力が得られ、その中でも2種類の菌株が高い出力が見られた。最も高い出力を示した分離株についてメディエータの種類が出力に及ぼす影響について検討したところ、酵母-グルコース系とは逆に2-メチル-1,4-ナフトキノンより2-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノンのほうが適していた。使用している炭素電極との反応性をサイクリックボルタンメトリー測定で調べたところ2-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノンより2-メチル-1,4-ナフトキノンのほうが反応性が高いことから、微生物燃料電池ではメディエータは電極よりも微生物との反応性が重要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「分極に影響を与える電池構成要素の解析」については概ね予定していた内容を検討することができたが,「超微小繊維構造を有する導電性分子導入によるアノード電極性能の向上」では使用したカーボンナノチューブ(CNT)の分散性が想定したよりかなり悪く,カーボンペーパー上への担持が困難であった.種々の分散溶媒を検討するとともにCNTも性状の違うものを試験することを検討している.
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Strategy for Future Research Activity |
電子移動効率に秀でた微生物の分離 MFCに適した微生物に求められる特性として,電子を細胞外に放出しやすいことが挙げられる.ここでは土壌や水圏から採取した各種試料の混合系を対象として,アノード極とカソード極を結ぶ外部回路とは別に,アノード極の電位を操作するための回路を設けて,ポテンショスタットにより電位を印加する電気培養の手法を用いて,MFCに適した微生物の分離を試みる.MFCの燃料源としてグリセリンおよび糖を用い,印加する電位に応じて生育してくる微生物群を,MFCでの出力特性と微生物の安定性(維持や保存の容易性)も考慮して選別する. ・CNT修飾のアノード電極におけるMFC発電効率向上 電極面積基準の電力密度は,MFCの基本性能指標であるが,実用化を考慮した設計においては容積あたりの性能が非常に重要である.ブラシ状電極やCNT修飾炭素電極などの比表面積の増大させた電極を用い,28年度に検討した微生物の生理状態,メディエータの種類や濃度などの反応溶液組成を最適化した条件で発電効率を検討する. ・耐熱性酵素のカソード極への適用 酵素を利用する際の弱点の一つとして,酵素の不安定性が挙げられる.常温付近では耐熱性酵素の安定性が著しく高いことが知られている.相対的な活性の低下は担持量を向上させることで原理的には補填できる.酵素としては,マルチ銅酸化酵素を対象にゲノム情報が公開されている好熱菌を対象として取得し,カソード電極に種々の固定化手法で担持し,電極活性と安定性(寿命)について検討する.
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Causes of Carryover |
年度途中の採択であったため微生物燃料電池作成に必要な消耗品(電極材料,メディエータ分子,プロトン透過膜等)については,年度当初に1年間の実験に使用する物量を機関予算で既に購入しており,保有薬品量をミニマムにする機関方針もあったため大部分の購入を次年度に先送りしたため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
保有していた電気化学測定器が年度末に故障(修理不可)したため,交換用としてポテンショスタットおよびデータロガーを追加で購入する(300千円).電気培養用としてポテンショスタット1台と培養セル作成を行う(300千円).電気化学測定および電池作成用としてプロトン交換膜,カーボン電極材料,メディエータ等の試薬類を購入する(500千円).酵素カソード極作成のための試薬類(タンパク質等)を購入する(300千円).カソード極を変更した微生物燃料電池セルを試作する(200千円).国際会議(FC semminar)参加のための旅費・参加費として300千円を予定している.
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