2016 Fiscal Year Research-status Report
p53誘導性タンパク質Mieapによる消化管腫瘍抑制のメカニズムに関する研究
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16K07136
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
中村 康之 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 主任研究員 (90569063)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | p53 / ミトコンドリア / ROS |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はp53誘導性タンパク質Mieapが不良なミトコンドリアを修復あるいは排除することでミトコンドリアの品質を管理する機能を見出した。平成24年度 基盤研究(C) 「新規p53標的遺伝子Mieapのミトコンドリアを標的とした腫瘍抑制機序の解明」において、Mieap遺伝子欠損ApcMin/+マウスを解析し、Mieap遺伝子の欠損がApcMin/+マウスの小腸及び大腸のポリープ数及びサイズを増加させ、腫瘍悪性化・がん化を促進することを見出した。この原因はMieap遺伝子欠損による不良ミトコンドリアの蓄積と、そこから過剰産生された活性酸素種(ROS)による酸化ストレスであることを示した。さらに、ApcMin/+マウスと同様の結果を胃癌モデルマウス(Ganマウス)でも確認していることから、本研究課題では、Mieap制御性ミトコンドリア品質管理機構の腫瘍発生・進展における役割を明らかとする目的で、Mieap欠損ApcMin/+マウス及びGanマウスの腫瘍組織のマイクロアレイ解析及びメタボローム代謝解析を行う。マイクロアレイ解析ではMieapによるミトコンドリア修復機構MALMの誘導に関与する因子の探索を行い、メタボローム解析の結果から得られるマウス生体内で実際のミトコンドリア代謝経路を参照して、その役割について詳細に解析する。さらにマウス個体において腫瘍組織からミトコンドリア画分を分取し、腫瘍内ミトコンドリアタンパク質に対して、 2DICAL(two-dimensional image-converted analysis of liquid chromatography and mass spectrometry)を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Mieap遺伝子欠損ApcMin/+マウスの腫瘍組織を用いたマイクロアレイ解析及びメタボローム解析すべての動物実験に関しては国立がん研究センター遺伝子組み換え実験安全委員会及び実験動物安全管理委員会に対して研究申請を行い十分な審議の後、承認を得て行った。ApcMin/+マウス及びMieap遺伝子欠損ApcMin/+マウスの小腸腫瘍組織を17週齢時に採取したサンプルを用いて、マイクロアレイ解析およびメタボローム解析を行った。マイクロアレイ解析ではMieapによるミトコンドリア修復機構MALMの誘導に関与する因子の探索を行い、メタボローム解析の結果から得られるマウス生体内で実際のミトコンドリア代謝経路を参照して、その役割について詳細に解析している。一方、ApcMin/+マウス及びMieap遺伝子欠損ApcMin/+マウスの腫瘍組織からミトコンドリア画分を分取し、腫瘍内ミトコンドリアタンパク質に対して、2DICAL(two-dimensional image-converted analysis of liquid chromatography and mass spectrometry)を行う実験を次年度に延期した。次に、胃がんモデルマウスであるGanマウスのMieap遺伝子欠損マウスの腫瘍組織を用いたマイクロアレイ解析及びメタボローム解析を行うため、Ganマウス(K19-Wnt1/C2mEマウス)とMieap 遺伝子欠損マウスとの交配により、K19-Wnt1/C2mE(Gan)マウス、K19-Wnt1マウス、K19-C2mEマウスに対するMieap遺伝子野生型、ヘテロ及びホモ欠損型のマウスを得た。これらのマウスの胃に発症する腫瘍を最適に比較できる時期を病理組織科学的に解析した。次年度では、各遺伝型のマウスより最適時に胃を摘出してマイクロアレイ解析及びメタボローム解析を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究結果において得られた、ApcMin/+マウス及びMieap遺伝子欠損ApcMin/+マウスの腫瘍組織を用いたマイクロアレイ解析及びメタボローム解析の比較データをもとにしたMieap機能解析を、平成29年度も引き続き行う。さらに、これらのマウス組織を用いてMieapによるミトコンドリア品質管理過程の電子顕微鏡解析(ミトコンドリア形態)及び免疫電子顕微鏡解析(Mieap及び、マイクロアレイ解析とメタボローム解析で見出された関連因子のミトコンドリアにおける局在)を行い、Mieapによるミトコンドリア品質管理機構の形態学的可視化によるメカニズムの解明を目指す。一方、Mieap遺伝子欠損Ganマウスの腫瘍組織を用いたマイクロアレイ解析及びメタボローム解析を行うために作成した、K19-Wnt1/C2mE(Gan)マウス、K19-Wnt1マウス、K19-C2mEマウスに対するMieap遺伝子野生型、ヘテロ及びホモ欠損型のマウスの胃において、腫瘍が形成された時期の前後及びその後一定期間毎に各遺伝型のマウスより胃を摘出してマイクロアレイ解析及びメタボローム解析を行う。Mieap遺伝子欠損Ganマウスの胃についても電子顕微鏡解析及び免疫電子顕微鏡解析を行い、Mieapによるミトコンドリア品質管理機構の形態学的可視化によるメカニズムの解明を目指す。
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Causes of Carryover |
ApcMin/+マウス及びMieap遺伝子欠損ApcMin/+マウスの小腸腫瘍組織を17週齢時に採取、それらの腫瘍内ミトコンドリアタンパク質に対して、 2DICALを行う実験を次年度以降に延期した。さらに、当該年度において、Mieap遺伝子欠損Ganマウスの作成及び、これらのマウスを用いたマイクロアレイ解析及びメタボロームを行う予定であったが、Ganマウス(K19-Wnt1/C2mEマウス)とMieap 遺伝子欠損マウスとの交配により得られたマウスの胃腫瘍が形成され、尚且つそれらを最適に比較できる時期を決定するため、病理組織科学解析を行った。このため、当初予定していた「Mieap遺伝子欠損Ganマウスの腫瘍組織を用いたマイクロアレイ解析及びメタボロームを次年度に延期した。以上の予定変更により、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度においても、17週齢時にApcMin/+マウス及びMieap遺伝子欠損ApcMin/+マウスから採取した小腸腫瘍組織におけるマイクロアレイ解析およびメタボローム解析を引き続き行う。さらに、これらのマウス個体の腫瘍組織からミトコンドリア画分を分取し、腫瘍内ミトコンドリアタンパク質に対して、 2DICAL(two-dimensional image-converted analysis of liquid chromatography and mass spectrometry)を行う。一方、Mieap遺伝子欠損Ganマウスの腫瘍組織を用いたマイクロアレイ解析及びメタボロームを行うためのマウスの作成とそれらマウスを比較する最適な時期を病理組織科学解析により決定した。従って、次年度では、これらのマウスを用いたマイクロアレイ解析及びメタボロームを行う。
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