2017 Fiscal Year Research-status Report
染色体バンド境界に着目した神経可塑性の遺伝学的分子基盤の解明
Project/Area Number |
16K07213
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
渡邊 良久 静岡県立大学, 薬学部, 客員共同研究員 (00362187)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | エピゲノム / 神経可塑性 / 染色体バンド境界 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究から、神経シナプス機能や脳神経疾患と関連した遺伝子群は、ゲノム上にランダムに局在しているのではなく、ある特定のゲノム領域に局在していると推測された。そこで、我々のグループが開発したエピゲノム解析法を駆使して、神経系由来を含む各種ヒト細胞系を対象に、DNA複製タイミングの解析を行い、染色体バンド境界領域を塩基配列レベルでゲノム網羅的に特定した。また、解析した各種細胞系ごとに“染色体バンド境界地図”を作成し、細胞系列間での比較解析を行った。具体的な方法としては、DNAマイクロアレイを用い、ゲノム全域を対象にした複製タイミングの解析を行った。またGC含量の区分境界(Isochore border)と複製タイミングの転換を基準にして、各種細胞系ごとに染色体バンド境界を網羅的に塩基配列レべルで特定した。その解析結果をもとに、染色体バンド境界地図を作成し、細胞系列間での比較解析を行った。 その結果、極端に長いシナプス関連遺伝子群や脳神経疾患遺伝子群は染色体バンド境界に集中して局在していることを判明した。また、脳神経疾患遺伝子群においてしばしば検出されるトリプレットリピート伸長を起こすゲノム不安定性部位は、染色体バンド境界と密接に対応していることがわかった。 これまでの研究結果から、ヒト染色体バンド境界に関する分子レべルでの医学的な解析は、脳神経疾患の病因の分子機構を知る手がかりを与えるだけでなく、あらたな脳神経疾患と関連した病因遺伝子を能率的に探索する方法としても有効であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究結果から、ヒト染色体の“バンド境界領域”は、神経シナプス機能と密接に関連した記憶ダイナミクスの分子基盤や脳神経疾患の発症メカニズムと密接に関連した特殊な生物学的機能を併せもっていることを実証できたため。また、“ハイリスク・ハイリターン”ともいうべき特徴を備えている重要な染色体機能領域であることを検証できたことが理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
作成した"染色体バンド境界地図”について、細胞系列間での詳細な比較解析をさらに推し進めて、極端に長いシナプス関連遺伝子群や脳神経疾患遺伝子群が局在するバンド境界の位置は、塩基配列レベルでエピジェネティクに変移することを検証する予定である。また、バンド境界部位は、記憶の可塑性の分子基盤と関連していることを検証していく予定である。 さらに、ゲノム網羅的な遺伝子発現解析ならびにDNAメチル化解析などのエピゲノム解析を行い、染色体バンド境界地図との相関関係を総合的に明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
DNAメチル化解析をはじめとする体系的なエピゲノム解析を、次年度以降に進めるように研究計画を変更したため。また、翌年度以降に、公開のゲノムデータなども活用して、総合的なゲノム情報解析を行い、細胞系列間での詳細な比較解析をさらに進めるように研究計画を変更したことが理由である。
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