2017 Fiscal Year Research-status Report
ペルオキシソーム膜透過輸送の分子機序とその制御システム解明
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16K07275
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田村 茂彦 九州大学, 基幹教育院, 教授 (90236753)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤木 幸夫 九州大学, 生体防御医学研究所, 特任教授 (70261237)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ペルオキシソーム / ペルオキシソーム欠損症 / 病因解析 / タンパク質輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題研究は細胞内小器官ペルオキシソームをモデルオルガネラとして、膜を介したタンパク質輸送とその制御システムを分子レベルで明らかにすることを目的としている。そこでH29年度は、まずPex14pホモオリゴマーの解離をタンパク質架橋剤依存的に阻害する実験系を構築し、3種のPex14p複合体(複合体I, II, III)における複合体構成変化の抑制と輸送能の相関を検討した。その結果、架橋剤添加による複合体IIIの蓄積と複合体IIの減少が認められ、なおかつマトリクスタンパク質の輸送能が著しく低下することを見いだした。つまり、3種の複合体が動的に構成を変化させながらマトリクスタンパク質の輸送を担うことが示唆された。次に、細胞分裂期においてPex14pが時期特異的にリン酸化されることを見出したことから、リン酸化Pex14pが構成する膜透過輸送装置のマトリックスタンパク質輸送能をin vivo及びin vitroで解析するための実験系を構築した。その結果、細胞分裂期では輸送能が抑制されていることを示し、膜透過輸送装置の機能制御機構を明らかにするための手がかりとなる新たな知見を得ることができた。さらに、コロンビア大学との共同研究により、聴力障害を呈するペルオキシソーム欠損症患者でPEX26遺伝子の点突然変異を見出した。Pex26pはAAAペルオキシンであるPex1pやPex6pがPex14pと相互作用するための足場となる因子であり、とくに複合体IIIの解離を担うことで膜透過輸送に重要な役割を果たすことを既に明らかにしている。この患者で同定されたPex26p(F51L)変異体はPex6pとの結合能が低下することに起因したマトリックスタンパク質の輸送効率の低下が認められ、非常に弱いペルオキシソームタンパク質輸送障害が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初設定した目的を達成することができ、また新しい切り口から今後の研究を進展させていくための基盤を得ることができたと考えているため、おおむね順調に進展していると判断した。ただし、ペルオキシソーム膜透過輸送装置複合体の構成因子や複合体構造の解明には至っておらず、他のペルオキシンとの相互作用も探索しながら解析を進めていく必要がある。そのためにも是非とも膜透過輸送の再構成実験系の構築に向けて研究を進めていきたい。このような背景から、当初の計画以上に進展しているとは評価できないため、次年度は、今年度に得られた成果を基にして、さらなる条件検討を進めることで研究を遂行する。
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Strategy for Future Research Activity |
H29年度は膜透過輸送装置複合体のダイナミックな複合体構造変化がマトリックスタンパク質輸送において必須であることを示すことができたため、今後は輸送過程における動的な構造変化を視覚的に捉えることで輸送メカニズムを明らかにしていきたい。そのためには、これまでに引き続きPex14pリコンビナントタンパク質を用いた複合体構造の再構成および電子顕微鏡による観察・解析を進めていく。新たにPex14pのリン酸化が輸送制御に関わることを見出したが、この修飾が複合体構造変化に与える影響についても解析を進めること、さらにリン酸化を担うキナーゼの同定も含め、機能制御機構の解明というアプローチからも研究を進める。さらに、Pex26pと複合体IIIの相互作用に着目し、ATP依存的な複合体構造変化の概要とPex26pを欠損した患者における病態発症メカニズムの解明という観点からも研究を展開させる。
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