2017 Fiscal Year Research-status Report
タンパク質凝集初期過程解析のための蛍光偏光相関分光装置の開発
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16K07312
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山本 条太郎 北海道大学, 先端生命科学研究院, 特任助教 (20585088)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 蛍光相関分光法 / 偏光蛍光相関分光法 / 回転拡散 / 並進拡散 / タンパク質凝集体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、生細胞内におけるタンパク質凝集体形成の初期過程における体積変化を偏光蛍光相関分光法(Pol-FCS)によって実現することを目指すものである。昨年度(平成28年度)では、それまで不足していたPol-FCSの時間分解能と検出感度の両方を向上させることに成功した。更に翌年度の研究計画を前倒しし、タンデムリピートGFP(単量体~5量体)の生細胞内測定に成功した。また、同じ装置を用いて細胞内構造や分子クラウディングの影響を検証できる可能性も示すことができた。 当該年度(平成29年度)では、実際に蛍光タンパク質で標識した凝集性タンパク質の測定を細胞内で行う系の確立と実証を行った。試料として黄色蛍光タンパク質(Venus)で標識したTDP43タンパク質をマウス神経芽細胞腫(Neuro2A)細胞に発現させる系を確立した。また、TDP43が生細胞中で凝集を始め、大きく成長していく過程を解析するためには、生きた細胞を生かしたまま継時的にpol-FCS計測する必要がある。しかしながら、蛍光タンパク質に励起光を照射し続けると、蛍光退色や光毒性による細胞へのダメージが懸念される。そのため、可能な限り短時間かつ弱い励起光で測定を行うための条件検討を行った。 TDP43は神経細胞内で凝集体・封入体を形成し、アルツハイマーや筋萎縮性側索硬化症(ALS)の発症と関わりがあるとしられており、その凝集過程を解明することは、これらの病気のメカニズム解明に大きく寄与できると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度(平成29年度)および翌年度(平成30年度)では、①pol-FCSによる生細胞内回転拡散計測の実証実験および②pol-FCSによる凝集体形成初期過程の実証実験を計画していた。しかしながら①についてはすでに前年度に前倒しで達成済みであった。 当該年度では、②の達成に向けて、Neuro2A細胞(マウス神経芽細胞腫由来)において、アルツハイマーや筋萎縮側索硬化症(ALS)の原因タンパク質と考えられている凝集性タンパク質TDP43のpol-FCS計測を行う系の確立・実証を行った。まずNeuro2A細胞内に黄色蛍光タンパク質Venusで標識したTDP43をpol-FCS計測を行う上で適切な濃度で発現させる系を確立した。 また、TDP43が生細胞中で凝集を始め、大きく成長していく過程を解析するためには、生きた細胞を生かしたまま継時的にpol-FCS計測する必要がある。しかしながら、蛍光タンパク質に励起光を照射し続けると、蛍光退色や光毒性による細胞へのダメージが懸念される。そのため、可能な限り短時間かつ弱い励起光で測定を行うための条件検討を行った。 また、同じ計測手法を用いて細胞内構造や高分子クラウディングの影響を検証できることを実験的に実証することに成功した。これによってタンパク質凝集体の凝集過程と高分子クラウディングとの関係性についても検証可能になり、当初の計画よりもより優れた計測手法となると期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28~29年度において、TDP43タンパク質の生細胞内計測を行うための測定系の確立・実証を行うことができた。今後は、確立した測定系を用いて、最終目標であるTDP43タンパク質の凝集初期過程の解析が可能であることを実証する。 TDP43は、プロテアソーム活性を阻害するMG132等の試薬を添加したり、細胞に浸透圧ストレスを加えたりすると、凝集を開始するという報告がある。今後の実験では、これらの刺激を与えた直後から、一定時間ごとにpol-FCS計測を行い、TDP43の凝集成長初期過程が解析可能であることの実証を目指す。 このような解析が実現することで、今後の凝集性タンパク質の初期過程の解析が進み、アルツハイマーや筋萎縮性側索硬化症(ALS)の早期発見や早期治療の研究に大きく寄与できると期待している。
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Research Products
(6 results)