2017 Fiscal Year Research-status Report
プロテオミクスと分子イメージングの融合による精子鞭毛運動制御因子の解析
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16K07337
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
柴 小菊 筑波大学, 生命環境系, 助教 (70533561)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 鞭毛運動 / 精子 / カルシウム / cAMP |
Outline of Annual Research Achievements |
真核生物の鞭毛繊毛運動制御機構を明らかにするため、本申請課題の研究期間においては、材料として扱いやすく反応が顕著に観察できる海産生物精子を用いて、「鞭毛運動活性化」、「鞭毛波形の非対称性制御」の現象に着目し、運動解析・イメージング技術とプロテオミクス技術を融合することにより、鞭毛繊毛運動制御に重要な新規調節因子の解析とその機能解明を目指している。 今年度は、平成28年度に構築したUVLEDを組み込んだ実験系を使用し、膜透過性ケージドcAMPを取り込んだカタユウレイボヤ精子の細胞内cAMP濃度上昇に伴う鞭毛運動変化を高速カメラおよびカルシウムイメージングシステムにより解析した。運動活性化前の精子に精子頭部、鞭毛それぞれ局所的なcAMP濃度上昇を誘導した結果、形成された鞭毛波に違いが見られた。また運動中の精子にUV照射を行った結果、cAMP増加により波形の非対称性の増加とその後の対称化が連続的に起こったが、カルシウム非存在下では波形の対称化のみが生じた。これらの結果から、cAMPがカルシウムイオンによって決定される鞭毛波の対称・非対称性に対して調整的な役割を果たしていることが示唆された。さらにリン酸化部位を認識する抗体を用いて運動変化に対応してリン酸化するタンパク質の特定に取り組んだ。また平成28年度に同定したカルシウム依存的に運動制御に関わると考えられる複数の因子に関して抗体作製を行い機能の解明を目指した。 これらの成果の一部について、日本動物学会第88回富山大会、国際会議Dynein2017、2018年生体運動研究合同班会議において口頭発表を行った。またカルシウムと鞭毛波形の関係について動物精子と単細胞藻類において比較解析した研究の成果をJ Plant Res.誌に、ウニ繊毛におけるカルシウム結合タンパク質の役割を解析した研究成果をSci. Rep.誌に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カルシウムによる鞭毛波形制御に関わる因子のプロテオミクスによる同定が順調に進んでいる。ケージド化合物を用いた実験系と高速カメラによる波形解析およびカルシウムイメージングシステムを組み合わせることにより、非常に短時間で生じる運動の変化とシグナルとの関係を解析することが可能になった。 ケージドcAMPを用いた実験により、カルシウムに依存的な波形変化とカルシウムに非依存的な波形変化を捉えることに成功し、精子の的確な方向変換についての新しい知見が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
ケージド化合物を用いた実験から行った鞭毛波形の定量解析およびカルシウムイメージングによって得られた知見をもとに、これらの変化を引き起こすタンパク質の同定およびその機能解析を進めたい。機能阻害抗体の作製など機能阻害実験系を予定している。またケージドATPおよびケージドcAMPを用いることにより明らかになった「鞭毛運動活性化」、「鞭毛波形の非対称性制御」に関する新たな知見に関して論文投稿準備中である。
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