2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K07365
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
川上 厚志 東京工業大学, 生命理工学院, 准教授 (00221896)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 組織再生 / ゼブラフィッシュ / 幹細胞 / トランスジェニック / Cre-loxP |
Outline of Annual Research Achievements |
ゼブラフィッシュをなど、高い組織修復能力を持つ生物モデルを用いた組織再生過程の解析は、近年、飛躍的に進み、多くのシグナルや分子の関与が明らかにされつつある。しかし一方で、新たな組織を作る多彩な細胞が再生前のどの細胞に由来し、それらはどのような過程を経て、それぞれの分化組織になっていくのかは未だ明らかになっていない。本研究では、再生遺伝子のBAC トランスジェニック(Tg)と Cre-LoxP組み換えを用いて、傷上皮、再生芽、骨形成細胞の3つの主要な細胞群の再生中組織における細胞系譜の解明を蛍光イメージングによって目指した。また、再生不能ゼブラフィッシュ変異体の解析も併せて進めた。今年度の主な成果は以下の通りである。 1.傷上皮の細胞系譜:傷上皮は再生中に形成される上皮であり、再生に深く関与するとともに、再生後の表皮を構成する。再生中の傷上皮と子孫細胞をEGFPで遺伝的に永久ラベルして細胞系譜を解析した結果、再生した表皮への貢献の異なる3つの細胞群があることがわかった。 2.骨形成細胞:トランスジェニックを用いた可視化によって、骨の再生に関わる骨芽前駆細胞を発見した。遺伝的ラベルによる細胞系譜解析の結果、骨の再生における骨芽細胞は、脱分化によって形成される骨芽細胞とこの前駆細胞由来の骨芽細胞の両方によることが示された。 3.再生芽:再生芽は、再生組織の間充織に形成される。先端再生芽は再生中に一過的に形成される細胞であり、細胞増殖制御などのシグナルセンターとして働くと考えられる。BACトランスジェニックによって、先端再生芽の可視化に成功し、先端再生芽が、再生芽を形成する間充織の一部から生じ、再生組織の大きさに応じて誘導される細胞数が異なることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
以前の基盤研究(C)の研究トから引き継いだ再生組織におけるFgfシグナルの役割を解明した論文は、再投稿と改訂を経てDevelopment誌に受理された。この研究では、Fgf20aおよび10シグナルの2段階の作用機構を明らかにした。 今年度から計画の細胞系譜および細胞機能の解析に関しては、再生上皮および骨前駆細胞について、Cre-loxPを用いた細胞ラベルの系が確立でき、傷上皮と骨前駆細胞の細胞系譜の概要が解明できた。さらに、再生芽の系譜解析は、先端再生芽のトランスジェニックを用いた再生に関わる細胞の動態の解析が大きく進展した。一方、先端再生芽を永続ラベルできるトランスジェニックの確立にはやや手間取っている。再生上皮および骨前駆細胞の細胞系譜解析についての論文発表はすでに準備を始めている。 以上に加え、私達が以前に発見した再生できないゼブラフィッシュ変異体の解析では、再生細胞が細胞死を免れて再生するには、ミエロイド細胞由来の因子が必要であることを示し、さらにサイトカインIL1bによる炎症が再生組織で過度に作用することで細胞死を起こしていること、一過的な炎症自体はは再生に必須であることなどを明らかにし、論文をeLife誌に発表した。以上のように、今年度は計画以上の進展があった。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の進捗状況に基づき、次年度以降、以下の項目の研究を進める。 (1)再生上皮の長期およびシングルセルのトレーシングを行い、単一の細胞が再生過程でどのように増殖、分化して、再生後の組織を構成し、さらに、非再生時の細胞新生にも関わるかを解明する。 (2)骨芽前駆細胞の非再生時における動態の解析、骨芽細胞新生への寄与を明らかにする。 (3)Cre-loxPシステムの改良と間充織トランスジェニックの作製を行う。Cre組み換えはうまく動作しない遺伝子もあった。これら(特に間充織に発現する遺伝子)のトランスジェニックの作製、解析を進める。これらに必要な新たなドライバーラインの開発も進め、細胞系譜の解析、幹細胞の関与の解明、細胞機能の解析などを進める。 (4)マクロファージに由来する未知の抗炎症因子の存在がこれまでの研究で明らかになった。この因子の解析と生化学的な同定等を目指して解析を進める。
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Causes of Carryover |
アメリカで行われたゼブラフィッシュミーティングに出席の予定だったが、講義の日程などもあって参加を取りやめた。さらに、国内の発生生物学会年会(熊本)も参加の申し込みをしていたが、震災で開催されなかった。 また、物品計画には計上していなかったが、年度途中で、共焦点顕微鏡のコンピュータを更新する必要が生じ(ウインドウズXPのサポート終了)、新たな機種を入れる予定だったが、追加配分された運営費交付金を充当した。試薬類の購入の多くも、民間の助成金を優先して使用した。これらのため多くの残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度は解析にルーチンに使用する試薬に残りがあったため購入しなかったが、トランスジェニックの解析が本格化するため試薬類の購入費に多くを充てる。新たに海外学会への旅費にも充てる。また、共焦点顕微鏡のガルバノモーターに不具合が生じつつあり、もし故障した場合には、かなりの部分を部品交換に充てる必要がある。
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Research Products
(13 results)
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[Journal Article] Fgf signalling controls diverse aspects of fin regeneration2016
Author(s)
Shibata, E., Yokota, Y., Horita, N., Kudo, A., Abe, G., Kawakami, K. and *Kawakami, A.
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Journal Title
Development
Volume: 143
Pages: 2920-2929
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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