2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K07420
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
岡田 令子 静岡大学, 理学部, 講師 (50386554)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊山 榮 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 名誉教授 (20063638)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 視床下部ホルモン / プロラクチン / 両生類 / 凍結耐性 / 低温適応 |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳類の体温維持には、視床下部-下垂体-甲状腺系による調節が重要である。即ち、体温が低下すると視床下部における甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)の合成が高まり、TRHによって脳下垂体からの甲状腺刺激ホルモン(TSH)が放出され、TSHは熱代謝を促進する甲状腺ホルモンの分泌を促す。一方、両生類ではTRHは主としてプロラクチン(PRL)の放出因子として機能する。PRLはイモリにおいて低温刺激により分泌が高まることから、両生類の低温環境順応に関与する可能性が考えられる。 本研究の目的は、下垂体ホルモンおよびその合成・放出を調節する視床下部因子の変化と、変温(外温)動物から恒温(内温)動物への進化との関連を明らかにすることである。29年度は、これまでゲノムデータベース上でのみ存在が示されていた魚類型PRL1B mRNAが、ウシガエルの脳下垂体前葉において実際に発現していることを初めて明らかにした。既知の哺乳類型のPRL1A mRNA発現レベルが変態の進行に伴って上昇するのに対し、PRL1B mRNAの発現は変態期の初期で比較的高く、成体ではほとんど発現が認められないことが判った。免疫組織化学によって、タンパク質レベルでも同様の傾向を示すことが判った。即ちPRL1Bが幼生期に何らかの役割を果たしている可能性が示唆され、その一つに水中での越冬が浮上した。 また、本研究は無尾両生類の低温環境に対する順応および凍結耐性に関わる因子とその調節機構を解明することも目的としている。ニホンアマガエルは凍結に対する抵抗性を有し、その調節にはグリセロールとその輸送体が寄与することがわかっている。29年度は前年度に引き続き、冬眠や凍結刺激を加えたアマガエルを用いて、冬眠や凍結によりグルコースの合成が高まり、輸送体の組織特異的な発現変動によりグルコースの輸送・蓄積が調節されていることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は計画に沿って順調に進んでいる。29年度の研究成果の内容は「研究実績の概要」欄に記した通りであり、両生類の低温順応・凍結耐性を調節する機構の一端を明らかにすることができた。また得られたデータに基づき次年度の研究課題を見出すことができた(詳細は「今後の研究の推進方策」欄に記載)。研究成果については日本動物学会第88回富山大会、平成29年度日本動物学会中部支部大会などの学会で発表を行った。また、新規に発現が確認されたPRL1Bに関わる研究成果、ニホンアマガエルの凍結耐性のグルコースおよびグルコース輸送体による調節機構に関わる研究成果についてはそれぞれ論文にまとめ、投稿準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
ウシガエルにおいて魚類型PRL1Bが脳下垂体中に発現し、哺乳類型PRL1Aとは異なる発現様式を示すことが明らかになった。前述の通り、PRLは両生類の低温環境に対する順応に関わっている可能性が考えられている。冬季に寒冷となる環境に生息するウシガエルの幼生は、冬季になると変態の進行を停止し、前変態期または変態始動期前半の状態で越冬する。そこで、越冬中の幼生および成体の脳下垂体中の各タイプのPRL mRNAおよびタンパク質の発現、局在、血中濃度を解析し、PRL1Aおよび1Bがウシガエルの低温順応にどのように関与しているのかを明らかにする予定である。また、PRL1Bの合成や放出が1Aと同じくTRHによって調節されるのか否かを明らかにし、低温刺激を与えた場合のTRHの発現変動についても調べる。その一方で、アマガエルで見られる低温および凍結に対する耐性と、上記の内分泌的な調節機構の関わりについて明らかにするため、冬眠や凍結時の組織中でのPRL等のホルモンやそれらの受容体の発現を調べる計画である。これらの研究を通じて、両生類が備えている低温感受性と低温による生理的調節機構を哺乳類と比較し、視床下部-下垂体系の進化と変温動物から恒温動物への進化の関係を考察する。
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Causes of Carryover |
実験動物として野生のカエルを業者より購入している。採集の都合上29年度に使用した動物数が少なかったため、30年度に動物の購入を行う。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Diethylstilbestrol administration inhibits theca cell androgen and granulosa cell estrogen production in immature rat ovary2017
Author(s)
Imamichi, Y., Sekiguchi, T., Kitano, T., Kajitani, T., Okada, R., Inaoka, Y., Miyamoto, K., Uwada, J., Takahashi, S., Nemoto, T., Mano, A., Khan, M.R.I., Islam, M.T., Yuhki, K., Kashiwagi, H., Ushikubi, F., Suzuki, N., Taniguchi, T., Yazawa, T.
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 7
Pages: 8374
DOI
Peer Reviewed
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