2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K07472
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
今村 央 北海道大学, 水産科学研究院, 教授 (00312421)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | コチ科 / オーストラリア / 種多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初はオーストラリア博物館とオーストラリア連邦科学・産業研究機構を訪問する予定であったが、後者では希望訪問時期に受入れができないことが分かり、予定を変更して平成30年度に訪問予定であった西オーストラリア博物館(以下、西博)とヴィクトリア博物館(ヴ博)を訪問した。西博(6日滞在)で46個体を、ヴ博(3日)で21個体を観察した。これら以外にも、本海域の分布が疑問視されるRogadius asperについて、ヴ博でそのように同定されている3標本(西博では標本なし)を観察し、これらはR. pristigerと同定されたため、オーストラリアにはR. asperは分布しない可能性が更に強まった。西博ではLeviprora属の新種を3個体、およびアネサゴチ属の新種を13個体確認した。これらの標本は詳細な観察が必要なため、時間不足で現地で観察できなかった他種4個体と合わせ、合計20個体を借用した。さらに、西部インド洋、アンダマン海などの他海域から採集された61標本を比較材料として別途観察した。 新たに収集したデータをコンピュータに入力し、これまでとりためたデータとともに種ごとに解析を行い、各種の形態的特徴を詳細に調査した。さらに同属に属する種間のデータの比較を行い、種的差異の検討・洗い出しを行った。類似種間のシノニム関係の再検討を行ったが、現在のところ新たなシノニムが疑われる種は見つかっていない。計測形質については各種の全形質をグラフ化することで成長変異の傾向を確認し、これらも平成30年度に行う各種の形態的特徴の解明のためのデータとした。さらに、すでに30個体程度以上のデータを集積できた4種、および希種でありこれ以上の標本観察が期待できない8種については予備的な形態的特徴の取りまとめを行った。 本研究のこれまでの結果、オーストラリア海域から2新種を含む50種のコチ科魚類が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題を申請した当初に、平成29年度には主に以下のことを予定していた。すなわち、1)オーストラリア博物館とオーストラリア連邦科学・産業研究機構の訪問,および標本観察、2)データの解析、3)シノニム関係の再検討、および4)必要に応じて他海域産の標本などとの比較検討である。先方の都合で訪問先が西オーストラリア博物館とヴィクトリア博物館変更となったが、訪問の順番が入れ替わっただけで、最終的にはいずれの博物館も訪問する予定であるため、本研究の遂行にあたって問題は全く発生していない。他については「研究実績の概要」で述べた通り、ほぼ順調に目標を達成することができたと考えている。その他、本研究課題では当初は予定していなかったが、平成28年度に借用したパプアニューギニア産の7個体の標本は希種Rogadius welanderiであることが確認され、新たな種内変異が見いだされた。さらに、比較に用いたアンダマン海産の標本からイネゴチ属の新種が2個体確認された。これらの新知見については本研究の成果の一部として2編の論文として公表する予定である。 このように、当初の目標はほぼ達成された他、予定以外の成果も得られており、全体としておおむね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、平成29年度に訪問予定であったオーストラリア博物館とオーストラリア連邦科学・産業研究機構を6月に訪問し、標本の観察を行う。この観察で当初必要と考えていたオーストラリア産標本の観察はほぼ終了するため、7月からこれまで蓄積した全データの解析と取りまとめを行い、オーストラリア海域に生息するコチ科魚類を特定し,各種の形態的特徴を明らかにし、本海域における本科魚類の種多様性を解明するとともに、生息する全種に対応した種レベルの検索表を作成する。これらを推進するために新たな技術や手法は必要ないため、昨年度と同様に、まったく問題なく実施できると考えている。
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Causes of Carryover |
約7000円程度の次年度使用額が生じたが、昨年度末近くになり、比較的高額な論文の超過ページ代等の請求(計82000円)があったため、他の用途に使用せず、平成30年度分の直接経費とあわせて使用することとした。したがって、全く問題なく使用することが可能である。
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Research Products
(6 results)