2017 Fiscal Year Research-status Report
東アジアにおける双翅目昆虫サシチョウバエ種多様性の解明
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16K07476
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三條場 千寿 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (70549667)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | サシチョウバエ / Sergentomyia属 / 日本 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本に生息するすべてのサシチョウバエ種を形態学的分類、分子遺伝学的分類により明らかにし、生息環境を把握するための調査を昨年度に引き続き行った。諸島を除く九州地方における調査は、1952年の福岡県で実施された1調査のみであることから、本年度はこれまで調査の行われていない鹿児島県および長崎県にてオイルトラップ法によるサシチョウバエの採集調査を行った。長崎県では東彼杵郡をサシチョウバエ生息好適地と推測したところ、Sergentomyia squamirostris が高密度で生息することを確認した。本年度の調査により北海道を除く、本州、四国地方、九州地方、沖縄本土にS. squamirostris が生息することが明らかとなった。また、群馬県みなかみ町、新潟県佐渡市、鹿児島県屋久島をモデル地域としたサシチョウバエの経時的採集の結果、季節消長が明らかとなり、成虫密度の高い時期が予測可能となった。 さらに、東アジアにおけるサシチョウバエの種多様性を明らかにする目的のため、中国、江西省、雲南省、広西省、四川省にて採取されたサシチョウバエ(Phlebotomus chinensis, P. stantoni. P. yunshengensis, P. kiangsuensis, P. lengi, S. barraudi, S. squamirostris, etc.)を得て、形態学的および分子遺伝学的比較解析を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サシチョウバエの卵、幼虫および蛹はその小ささゆえ、自然界においてそれらの好適生息環境を特定することが困難であったため、日本における主要種であるS. squamirostris のコロニーの確立を試みた。そのため、吸血源動物種特定に資する予定であった雌サシチョウバエを、コロニー確立に使用した。新潟県佐渡市で採集した吸血後のサシチョウバエ成虫より卵を得て、尾剛毛を4本もつ老齢幼虫までの飼育に成功した。自然界における吸血源動物種の特定には至らなかったものの、実験的にニホンアマガエルの吸血を確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで蓄積したサシチョウバエ採集地および採集時の気温、湿度、標高、植物相のデータを基に、集計・解析することにより国内における分布可能域マップを作成する。さらに、台湾、中国等、東アジア各国からのサシチョウバエ種と国内で採集されたサシチョウバエを形態学的および分子遺伝学的に対比させ、系統および種分化につき最終的な図を完成させる。さらに、雌サシチョウバエから吸血源由来のDNAを抽出しシークエンスにより吸血源となる動物種を明らかにし、サシチョウバエ媒介性感染症の防疫策に資する情報を提供する。
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Research Products
(8 results)